核の脅威に「慣れた」世界のその先 侵攻の出口に待つ矛盾とジレンマ

有料記事ウクライナ情勢

聞き手・真田嶺
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 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、24日で1年を迎えます。この1年間、世界は「核の脅威」に改めて向き合ってきました。侵攻の出口は、見えるのか。ロシアによる核の脅しは、世界にどのような影響を与えたのか。核を含む軍縮・軍備管理に詳しい秋山信将・一橋大教授に聞きました。侵攻の出口を探るうえで、国際社会はひとつの矛盾とひとつのジレンマに直面すると説きます。

 ――侵攻の現状をどう見ていますか。

 最近、核の話があまり出なくなりましたが、核兵器使用のリスクは全く低くなったわけではないと思います。引き続き、状況次第ではロシアが核を使う可能性は否定できない。ロシアが戦闘において不利な状況に陥っていくと、何らかの理由をつけて核兵器を使う、あるいは核の脅しの信憑性(しんぴょうせい)を高めていくという可能性はあると思います。

 国際社会は、ある意味でこの1年間を通じて、「核が実際使われるかもしれない」という懸念とずっと向き合ってきたといえます。今あまり注目されていないというのは、それに慣れてしまった状況もあるのかなと思います。

記事後半

「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議のメンバーでもあり、核軍縮に関わる議論を追ってきた秋山教授。記事後半では、侵攻により核軍縮がどのような影響を受けたかについて聞きました。

 ――核の脅しに慣れてしまった、と。

 ロシアは戦争を始める前段階から、前振りとしてミサイルの配備であったり、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含めた発射の訓練であったり、核兵器の使用もありうることを示唆するような行動を起こしてきました。シグナルを送ってきていたわけです。事態がエスカレートすれば核兵器を使うかもしれないと思わせることで、欧米がロシアと直接対峙(たいじ)をすることをためらわせる意図があったと思います。

 そしてシグナルを受けて、本当に核が使われるかもしれないと考える人は結構多かった。ですがやはり、人間は学ぶんですね。ロシアがいろいろなシグナルを送っても、欧米側はいちいち反応しなくなっていきました。

「核の脅し」への慣れとリスク

 ――脅しに慣れることは危険ではありませんか。

 この慣れは結構怖い。我々は…

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