画家・松本竣介の息づかい感じるアトリエ見納め 群馬・大川美術館

有料記事

松沢奈々子
[PR]

 小さな座卓に腰を下ろし、読書をしたり、デッサンに没頭したり。時には客人と語らい、子どもの遊び場にも――。群馬県桐生市大川美術館にあるアトリエは、早世の画家、松本竣介(1912~48)の生前の姿を浮かび上がらせる。その空間が4年超の展示を終え、飾られている遺品が今年6月、遺族のもとに返されることになった。アトリエと作品を同時に鑑賞できる最後の企画展が現在、開かれている。

 1989年に開館した大川美術館は、創設者で実業家の大川栄二(1924~2008)が約40年間かけて収集した作品群など約7500点を所蔵。日本の近代洋画が中心だが、中核をなすのが約80点の松本作品だ。大川が最も敬慕し、美術品収集のきっかけになったのが松本で、その才能にひかれ作品を買い続けたという。館の建物の設計は松本の次男で建築家の莞(かん)さんが手がけている。

 アトリエは、18年、松本の没後70年と開館30周年を記念して展示室の一角に設けられた。「竣介のアトリエ再見プロジェクト」と題し、自宅内のアトリエに残された画材や書籍、置物など、60点を超える品々を遺族が提供。莞さんが監修し、父と死別した8歳までの自身の記憶を頼りに配置した。再建や復元ではなく、松本が座っていた場所や愛用品を「再び見せる」という趣旨で、再現的な要素はソファや北側の窓など最小限にとどめたという。

 実現に向け、2カ月にわたるクラウドファンディングも実施。桐生市内外から目標額(500万円)を上回る750万円が集まった。

 アトリエの設置と同時に、18年から翌年にかけ、松本に関する四つの展覧会を開催。好評だったため撤去はせず、展示を続けてきた。それから4年以上が経った今年、遺族からの申し出を受け、没後75年を迎える6月に返却する。

 作家や画家のアトリエを再現…

この記事は有料記事です。残り693文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら