ロシアのウクライナ侵攻から1年。軍事大国の侵略にウクライナは予想を超える抵抗を見せたが、今も戦闘に終わりは見えない。国民の高い士気と欧米の支援に支えられ、ウクライナはどこまで持ちこたえられるのか。
首都キーウから北西へ約100キロ。白樺(しらかば)の森林に囲まれた平地に今月20日、ウクライナ軍の戦車、自走榴弾(りゅうだん)砲などの兵器が並んだ。北のベラルーシ国境からも、東のチェルノブイリ原発からも15キロと離れていない。
轟音(ごうおん)が響き、振動が体を揺さぶる。敵の戦車に見立てた緑色の目標物からオレンジ色の火柱があがった。
内務省軍や国境警備隊、志願兵で組織される領土防衛軍などが公開した軍事演習だ。北部方面担当の統合軍司令官、ナーエウ中将は「ここの状況は1年前と全く異なる。我々の防衛能力は格段に高まった」と話した。
昨年2月24日、ロシア軍はウクライナ北部のロシア、ベラルーシ国境から不意を突くように侵入、キーウ制圧を目指した。しかし、補給を断たれたロシア軍は3月末にキーウ周辺など一帯から撤退。夏以降は米欧から精度の高い武器の提供を受けたウクライナ軍が攻勢に出て、北東部ハルキウ州や南部ヘルソン州の一部からもロシア軍を撤退させた。
ナーエウ中将は、現在ベラルーシに駐留するロシア軍部隊は装備に問題を抱え、再度の国境突破の危険は当面はそれほど高くないとみるが、「敵がここに来れば何が起きるかを常に見せておく必要がある」と「予防措置」の重要性を強調した。
演習場の入り口には、対戦車ミサイル「ジャベリン」など欧米製の兵器が展示されていた。この1年、ウクライナを支えた米欧の軍事関与の象徴だ。
両軍とも死者数は10万人近くに
米政府高官は今月、米国が戦…

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