無明舎出版、秋田で旗揚げ50年 青森の夏、老人との出会いが始まり
あきたを語ろう 安倍甲
私事で恐縮だが、去年、無明舎出版は創業50年を迎えた。そのせいもあり、年末まで何度かメディアの取材を受けることになった。そこでのインタビュアーの質問は、無明舎出版の初めての出版であり、私自身の著作でもある「中島のてっちゃ」に集中した。
知らない人も多いと思うが「中島のてっちゃ」こと工藤鉄治さん(1916~92)は、知的障害をもつ秋田市の放浪芸人(尺八)で、「市長の名前を知らずとも、てっちゃの名前を知らぬは秋田市民にあらず」とまで言われた当時の人気者だ。
この人物と知り合い、引き寄せられるように取材を始めたのだが、あらためて「執筆動機は?」と訊(き)かれると、自分でもよくわからない。もう半世紀も前のことだし、「興味があったから」としか答えようがなかった。
年が明け、学生時代に親しく…