炊き出しはない、がれきもそのまま、支援待つ住民 記者が見たシリア
5万人以上の死者が出たトルコ・シリア大地震。内戦下のシリアでは、これまで6千人を超える犠牲者が出たとされる。記者が23日に北西部ジンディレスを訪れると、破壊された街で支援物資を待つ住民たちの姿があった。
「どこに行ったらテントがもらえるのか?」「ここには何もない!」。ジンディレスの街中で、記者を囲んだ10人ほどの市民が口々に訴えた。
内戦が続くシリアでは、北西部の一帯を反体制派が支配し、アサド政権の強権統治を逃れた多くの避難民が暮らしている。もともと410万人が人道支援を必要とするなかで、今回の地震が起きた。
高層の建物が崩れ落ちたトルコの被災地の方が、見た目には被害が大きく感じられる。だが、決定的に違うのは、市民に支援が行き届いていないことだ。
テントはオリーブ畑や空き地などにも並び、路上にまで張られていた。行政が主導して競技場や造成地に「テント村」をつくり、支援団体が常駐して物資や医療の支援を包括的に行うトルコとは対照的だ。
トルコでは避難民が行列をつくる炊き出しの風景も、ジンディレスの街中では見かけない。
がれきの撤去が進む様子もない。住宅街では所々で崩れたコンクリートなどが道路をふさぎ、通れない。
重機を見かけたのはわずか数カ所だけ。粉じんが立ち上るのを防ぐために水をまく放水車もないので、街を歩くと記者の上着とバッグはすぐに砂ぼこりにまみれた。
ジンディレスの至るところに、倒壊したり、壁が崩れ落ちたりした住宅がある。地元行政当局によると、約270棟が倒壊し、1千棟以上が損傷して住めなくなった。テント、衛生用品、食料、服などあらゆる物が足りないという。
飲食店で働くイヤード・アハマドさん(39)は、平屋の自宅の隣にあった4階建ての建物が崩れ、家に住めなくなった。内戦で何度も家を追われた末に、地震で住む場所を奪われた。
地震の発生から2週間以上が経つが、食料支援があったのは1度だけだ。国際社会の支援が届かないのは、「なぜだかわからない」とイヤードさん。「内戦でも地震でも、私たちのような市民が結局、貧しい思いをするのです」と言って、うなだれた。
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ジンディレスでの取材の一部は、トルコ当局に同行して行った。取材への干渉や記事の検閲はなかった。(シリア北西部ジンディレス)