もし技能実習制度がなかったら、日本はどうなっていただろう。

 制度が創設されて、今年で30年になる。この間、働き手不足への対応や技術革新、産業転換を大胆に進め、実習生がいなくても成り立つ社会になっていたかもしれない。

 しかし、どれも進まなかったら、多くの産業が行き詰まり、地方は廃れ、食卓に国産の野菜や水産物はほとんど並ばなかっただろう。そう思うほど、私たちの衣食住は実習生に支えられている。

 それなのに、この制度は「建前」で運用されてきた。技能を習得し母国で生かしてもらう国際協力が目的とされるが、実態は、入れ替え可能な安い労働力を確保する手段だった。昨年12月に開かれた政府の有識者会議でも、目的との隔たりは「誰の目からみても明らか」と指摘された。制度の見直しに向けて議論が進むのは当然だろう。

 技能実習制度は、外国人のための制度ではなかった。実習先を変える自由を認めないことで、地方から都市部への人材流出を防いできた。これは外国人を望まぬ環境に縛り付ける危険と表裏一体だった。

拡大する写真・図版技能実習生の推移

 国士舘大学の鈴木江理子教授は…

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