生活保護訴訟のさなか、再び停止処分を通知 三重・鈴鹿市

黄澈
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 自動車の保有をめぐる行政指導に従わなかったことを理由に生活保護の支給を停止したのは違法だとして、三重県鈴鹿市を相手に処分の取り消しなどを求める訴訟を起こしている女性(80)と次男(55)に対し、市が再び保護の停止を予定し、通知した。市への取材で分かった。

 鈴鹿市内在住の親子は、難病の次男が通院するために自動車の利用が必要だが、市は車の保有の条件として要求した運転記録を提出しなかったなどとして、昨年9月に生活保護の支給を停止。親子は津地裁に訴えを起こすとともに、一審判決までの処分の執行停止を申し立てた。その後、津地裁は「保護を停止すれば、生命身体に対する危険に直面する」などとして認める決定をし、名古屋高裁もこの判断を維持した。

 ところが市は2月24日、母子に対し、生活保護の停止処分を予定し、3月23日に弁明のための聴聞会を開くとの通知書を再び出した。鈴鹿市保護課は「次男が通院先を市外から市内の病院に変えたため条件が変わり、タクシーでの通院が可能になった。車を処分するための見積書の提出を指導したが従わず、保護を停止することにした」と説明している。

 裁判所が保護停止処分の効力を止めていることについては、「顧問弁護士とも相談し、運行記録の提出をめぐる裁判とは、別個の事案と判断した。不服があるなら、聴聞会で弁明できる」とした。

 これに対し、原告側代理人の芦葉甫弁護士は「鈴鹿市の対応は前代未聞で、当事者を再び生命の危機に陥れるものだ。司法の判断を無視しなければならないほどの事情がない場合、国家賠償法の規定に基づき、今回の対応の意思形成に関わった市職員個人の責任問題も浮上することになる」と批判している。(黄澈)

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