「でも生きて」アルコール依存で意識戻らぬ父 人生激変した娘の願い
高校1年生の夏の昼下がり。所属する将棋部の部室に先生が駆け込んできた。「今すぐに来て」。学校へ迎えに来た祖母から、父が仕事中に倒れたと聞いた。熱中症にでもなったのかと思った。だが、あの日から2年9カ月。父の意識は今も戻っていない。
女性(18)は当時、福井県内で40代の父と母、4歳下の弟と4人で暮らしていた。
物心がついたころから、家族で旅行や外食をした記憶がない。
アルコール依存症の父 ままならない会話
父はアルコール依存症と診断された。女性が小学6年生の時だ。自宅にいるときの父はいつも寝ていた。仕事から帰宅した時にはすでに酔っ払っていて、家族との会話はままならなかった。
学校で友人から家族とディズニーランドに行く話を聞いた。うらやましさが込み上げた。でも、父が「飲酒運転で捕まるよりはマシ」と自分に言い聞かせてこらえた。
酔った父は自宅のいたるところで小便をした。いつも母が片付けていた。
父への怒りが爆発したのは中学3年生の時。高校受験の日に、会場まで父に車で迎えに来てもらった。父は運転しながら横にあった缶酎ハイをあおった。
「合格が取り消されたらどうすんの!」
そう言っても、笑いながら酒を飲み続けていた。
父は、ホームセンターに勤めていたが、まじめにこなしていた。生活にも困らなかった。あの日までは――。
倒れた日、父は集中治療室に運ばれた。複数回に及ぶ手術は翌朝まで続いた。
手術の合間に医師から受けた説明では、父は仕事中に脳出血で倒れたという。アルコールの過剰摂取が引き起こす高血圧が原因だった。同僚が発見したのは、倒れてからおよそ1時間半後。医師からは「もう意識は戻らない」と告げられた。父は植物状態になった。
激変する生活 支えてくれたのは
倒れてから1カ月後、初めて…