「幸福な監視国家・中国」はどこへ? 崩壊論と脅威論のはざまで

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聞き手・吉岡桂子
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 崩壊論と脅威論――。日本における中国経済への見方は崩壊論と脅威論の間を揺れてきました。日本にとって経済の深い結びつきと安全保障の対立を抱える巨大な隣国をどう診るか。神戸大学教授の梶谷懐さんに聞きました。

 ――デジタル技術で人々の移動を徹底的に管理したゼロコロナ政策の破綻(はたん)を経て、「幸福な監視国家・中国」はどこへ行くのでしょうか。

 「幸福な監視国家」で強調したのは、中国社会は功利主義的な統治理論と相性がいいということです。目的が正しければ手段は問わない。コロナ対策についても、ある時期までは支持されていたけれども、ウイルスの危険性は弱く、感染力が高いオミクロン株が流行したことで、目的の正しさが失われたので、人々は反発しました。これからも、監視されるデメリットを上回るメリットが達成されるなら、強権的な監視は受け入れられるでしょう。

 ――習近平(シーチンピン)政権は、自由な言論を規制するだけではなく、民間の経済活動についても規制を強めています。この体制が経済活動に与える影響をどうみていますか。

 中国は長期にわたって専制国家です。権力を集中させて行う政治と、そこから距離があるところで経済活動が行われてきました。1990年代以降に改革開放が本格化してからも、変わりません。島根大学教授の丸橋充拓さんは「国づくりの論理 人つなぎの論理」(「江南の発展 南宋まで」)と表現していますが、中国は専制と放任が共存してきた社会です。

 この構造は時代が変わっても変わりません。習政権の規制強化を大躍進や文化大革命を起こした毛沢東時代への逆行になぞらえる見方が米国を中心にありますが、あの時代は経済活動の基盤になる人のつながりが徹底的に壊されました。習政権は現時点ではそうではないし、経済活動を壊してしまうことはできないでしょう。そうである以上は、規制を強めれば押し戻す力が働く。規制強化の方向がずっと続くとは思えません。

 ――中国経済に対する見方が、崩壊論から脅威論まで大きくぶれるのはなぜでしょうか。

 中国経済は見る人によって相…

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