小学校の入学準備、どこまで親が負担? 算数セット、防災ずきん…

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田渕紫織
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 文房具や体操服、算数セット……。小学校の入学前に保護者がそろえておくべき物は多岐にわたります。ランドセルと合わせて10万円近くかかったという声もあります。各自が全て新品でそろえる必要はあるのでしょうか。義務教育にかかる費用を、どこまで家庭が負担し、どこから公費でまかなうべきなのでしょうか。現場や専門家の声をもとに考えます。

入学前の準備品が20種類

 東京都足立区の女性会社員(39)は、今春に息子(6)が進学する区立小学校の説明会に出て驚いた。入学前に自分たちでそろえなければならない物が、予想以上に多かったからだ。筆箱やハサミから体操服、防災ずきんまで、20種類もある。

 それぞれネットで検索し、見つからない物は休日に車で店を回って探す。給食袋、絵本袋など必要な袋だけでも5種類。それぞれ何センチ×何センチと目安が決まっている。文房具など、「キャラクターものはだめで、無地」という条件があるものも少なくない。上履きや体操服などの学校指定品は、指定された店に出向き、一部は日時を予約して買わなければならない。

 「大きさや柄に細かい制約があるので、探すのが大変。かと言って全く自由だと、子どもも私も迷ってしまって時間がかかるのでしょうが……」

 入学準備品にかかった費用は5万円ほど。ランドセルも含めると10万円近くにのぼった。一部、両親の援助を受けたが、「そうでなかったら厳しかった」と言う。鉛筆の1本1本も含めてすべての物に名前を書く作業もまだ残っており、入学準備の終わりは見えない。

「今まで通り」を踏襲し続け…

 なぜ、これほどのものを、各自が買う必要があるのか。

 埼玉県の市立中学校の事務職員で、家庭の教育費負担について研究している柳澤靖明さんは、「学校が『今まで通り』を踏襲し続けてきた結果、見直しや検証をしないままの出費や学校指定品が存在し続けている」と話す。「単価の安い物は『ちょっとだから』『安いから』と私費負担でお願いし、積み重なることで各家庭でこれだけの負担になっていることは、もっと知られてもいいと思います」

 過去に勤務した小学校の額をもとに、入学準備の保護者負担はランドセルも合わせて約7万円という一例を紹介したことがあるが、学校や地域によって準備する物の種類が異なり、金額の差が激しいという。

 学校が指定品として設定することで、より高額になっている面もある。「その物品がそもそも必要なのか、指定せずに自由に買ってもらった方がいいのかは、学校側が常に検討していくべきです」

 ただ、学校の中で誰が責任を持って改善していくかが明確でないこともあり、見直しが進みづらい。また、学校の予算が十分でないため、家庭で購入してもらわざるをえないという事情もあるという。

 「保護者が、学校に質問をしたり意見をしたりすると、教職員側も実態をとらえ、検討の俎上(そじょう)にものります。直接担任に言いにくければ、どの学校も年1回は実施していることが多い保護者アンケートの際に書く手もあります」と話す。

記事後半では、東京都立大の阿部彩教授に、公費負担・私費負担にかかわらず、かかるお金を減らす方法を聞きました。先進自治体の取り組みも。

「子どもの世界に影響」

 毎年新品をそろえることで…

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    氏岡真弓
    (朝日新聞編集委員=教育、子ども)
    2023年4月3日9時55分 投稿
    【視点】

    【お金がかかりすぎ】 「義務教育が無償」というのは大いなるフィクション。自分が子育てをしたときもそう思いましたが、いまはそれに拍車がかかっていると感じます。  その背景にあるのは、削ることが苦手な学校のありかた、みんないっしょの教材を重

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    仲村和代
    (朝日新聞社会部次長)
    2023年4月3日11時52分 投稿
    【視点】

    自分の子どもの入学前、袋の大きさなどを細かく指定され、なぜここまで?と思ったのを思い出します。入学してみると、「全員でそろえる」ことが目的というわけではなく、それなりの理由があるのだな、とも思いました。置き場が決まっていて、ひもが長いとうま

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