「逆転の報徳」がリベンジ成功 大阪桐蔭・前田の登板に「よっしゃ」
(31日、第95回記念選抜高校野球大会準決勝 兵庫・報徳学園7―5大阪桐蔭)
快音とともに、地鳴りのような歓声が甲子園を包む。八回1死一塁。報徳学園の4番石野蓮授(れんじゅ)が初球をとらえた打球が左翼手の頭上を越えた。一塁走者の山増達也が一気に三塁を蹴ると、どよめきは大きくなっていく。本塁へ。ついに、5点差をひっくり返してみせた。
「いい流れに乗せてもらって打てた。最高に気持ちよかった」。ヒーローは照れくさそうに笑った。
昨秋の近畿大会決勝で敗れた大阪桐蔭はやはり、手ごわかった。三回。投手陣の乱調につけ込まれ、5点を先行された。だが、下を向く選手はいない。2戦連続サヨナラで勝ち上がってきたチームには、勢いがあった。「ぜんぜん焦りはなかった。逆に気合が入ったくらい」と主将の堀柊那(しゅうな)。その裏、3連打と犠飛で2点を返した。
追い上げムードになれば流れも傾く。粘り強さから、伝統の「逆転の報徳」を期待する声援がアルプス席だけでなく、外野席からも背中を押してくれた。
七回は連打と暴投で無死二、三塁とし、7番林純司の左翼線二塁打で1点差に迫り、次打者のバント安打でなお一、三塁。ここで相手のエース前田悠伍が2番手で登板すると、報徳ベンチがさらに沸いた。
この左腕から完封負けを喫した昨秋以来、雪辱を誓ってきたからだ。前日の練習も、4カ所で行ったフリー打撃の投手はすべて左投げ。2時間打ち込んだ。
狙い通り、代打の宮本青空(はる)が代わりばなの初球スライダーを左前へ。同点のホームを踏んだ林は言った。「絶対に前田を引きずり出そう、とベンチで言い合っていた。出てきて、『よっしゃ』となりました」
八回も積極的に振って出て、逆転劇が完成した。走塁ミスやバント失敗もあったが、「それも含めて、僕たちの野球。劣勢でも失敗してもポジティブに」。石野は胸を張った。
昨年の春夏の王者を次々に倒し、決勝へ。21年ぶりの頂点まで、一気に突っ走る。(山口裕起)
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- 【視点】
■逆転の報徳、健在 この甲子園で準決勝までの4試合、すべて逆転やサヨナラで勝ってきた報徳学園。 2回戦の健大高崎戦は1点先制された後に逆転。 3回戦の東邦戦、準々決勝の仙台育英戦は延長10回タイブレークでサヨナラ勝ち。 そして準決勝