少子化対策「ゴールではなく中継地点」 市民団体が懸念する世論分断

少子化を考える

中井なつみ
[PR]

 政府は31日、岸田文雄首相が掲げた「異次元の少子化対策」のたたき台となるこども・子育て政策強化の「試案」を発表した。今後3年間を「集中取り組み期間」とし、経済的支援や子育てサービスの向上、全年齢層への切れ目ない支援、男性育休の推進などを網羅的に列挙した。

 今後、政府の「全世代型社会保障構築本部」の下に首相が議長の「こども未来戦略会議」を設けて、開始時期や裏付けとなる財源を議論する。負担増の議論は避けられず、調整の難航は必至だ。現場で当事者と関わる人はどう見るのか。

市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」代表の天野妙さん

  岸田文雄首相が1月に打ち出した内容に比べれば、今回のたたき台は進歩しているところが多いと思います。でも、あくまでも今回は「中継地点」で、「ゴール」ではないはずです。

 「社会全体でこども・子育てを支えていくという意識」が必要だと国が明示したことは、とてもいいことだと感じます。一方で、たたき台に示されたさまざまな理念をこれから実現するには、財源の確保も不可欠です。

 この分野に注力するという国の姿勢を、子どもがいない人たち、子育てを終えた人たちにどう伝えるのか。「自分たちには関係ないのに、なぜそこまで負担を強いられるのか」という思いが拡大しかねません。

 この分野を社会として支えることは、国全体にとってメリットがあります。犯罪率の低下や経済効果が期待できることは、これまでの研究などでも示されています。そうした視点で発信していくことが、政府に求められているのではないでしょうか。

 さまざまな「場面」に設けられた所得制限の撤廃、高等教育の無償化などをこれまで訴えてきました。一足飛びにすべてを実現することは難しいことも理解できます。繰り返しになりますが、あくまでも今回のたたき台は「中継地点」。これから、ゴールとする場所をどう描き、どうつないでいくのか、注視していきたいと思います。(中井なつみ)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2023年4月1日9時25分 投稿
    【視点】

    自民党はゴールは合ってても、いつも着地点を間違える、天野妙さんの名言です。今度こそ、少子化改善のゴールにたどりつくために、今回の叩き台を中継地点とし、財源を確保して、当事者たちが求める子ども子育て政策ど真ん中に着地してほしい。 いま、