「解散に何のメリットが…」首相、強気の陰で低めの目標 補選の本音

有料記事岸田政権衆参補欠選挙2023

西村圭史 藤原慎一
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 4月6日に参院大分、11日に衆院の千葉5区、和歌山1区、山口2区と4区の衆参5補欠選挙が告示される。政権発足から1年半、自民党総裁任期でいえばちょうど折り返し時点で行われる補選は、岸田文雄首相にとって「中間評価」となる。どう臨むつもりなのか。

 「いよいよ統一選ですね」

 新年度予算が成立した3月28日、公明党山口那津男代表が、大勢の記者が見ている国会内で、首相と握手しながら切り出した。

 「統一選。はい、そうですね」と応じる首相に、山口氏はたたみかけた。「解散じゃありませんね?」

 4月23日投開票の衆参5補選を吹き飛ばすような、衆院の「解散風」が永田町に吹いていた。

 山口氏の直球の問いかけに、首相も「あ、いや、統一地方選です。補欠選挙もあります」。その夜、記者団にも問われ、首相は衆院解散・総選挙を否定した。

 解散は事実上、首相の判断次第。実施中の統一地方選に国政選挙並みの力を注ぐ公明が、神経をとがらせたのには理由がある。

 「今を逃すと、これほどまでに選挙に良い状況がなくなる」などと、支持率低迷にあえいできた政権で、急に複数の自民党幹部が解散に言及し始めたからだ。

「岸田の次は岸田」 変わる風向き

 3月21日、首相はウクライナ電撃訪問を成し遂げ、その直前には日韓関係最大の懸案であった徴用工問題に政治的決着をつけ、4年ぶりに日本に韓国大統領を迎えた。政権が旗を振った賃上げでは、春闘で大企業の満額回答も相次いだ。

 朝日新聞の全国世論調査では内閣支持率が40%(前回2月調査は35%)まで回復。支持率が不支持率を上回る報道各社の世論調査も出てきた。

 安倍晋三元首相と近かった閣僚経験者は「徴用工問題まで片付けて大きな実績になった。さらに支持率は回復する」とみる。自民内に「ポスト岸田」をうかがう存在も気配もなく、参院幹部からは「岸田の次は岸田だ」と来年秋の総裁選での再選を確実視する声も上がり始めた。政権に批判的なベテラン議員も「しばらく岸田政権が続く」と、首相との関係構築を模索する。

 政権に明るい兆しが見えるが、首相は解散を否定した夜、周囲に「選挙はやってみないと分からない」と漏らし、こう言い切った。「多くの議席をいま持っている。急いで解散しても、絶対安定多数以上に議席を増やして何のメリットがあるのか」。自民内の主戦論をよそに、先送りできない政策に取り組むことで実績と支持率を少しずつ積み上げていくことを基本路線としている。

 そのなかで臨む衆参5補選。表向きは全勝を目標に掲げるが、「現状維持」が首相の本音だ。

「3勝2敗」の首相 自民党内には違和感

 ウクライナから帰国した3月…

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2023年4月1日11時15分 投稿
    【視点】

    衆院5補選で現状維持の3勝が自民の勝敗ラインとすれば、政治資金問題で現職が辞めた千葉5区はやはり注目です。ふつうは自民に逆風ですが、(旧)江戸川で東京と隣り合う地域で各野党がそこそこ票を取るだけに統一候補が出ないのが過去数回の構図で、今回も

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    内田晃
    (朝日新聞政治部次長)
    2023年4月1日13時29分 投稿
    【視点】

    「解散して何のメリットが」という言葉。首相の本音なのだろうと思います。 先の国会での予算審議をみれば、今後の防衛費の増額にしても、異次元の少子化対策にしても、巨額の支出が必要な大目標を打ち出しながら、首相は肝心の財源などであいまいな説

統一地方選挙・衆参補選2023年

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