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　優れた報道で国際理解に貢献したジャーナリストに贈られるボーン・上田記念国際記者賞の2022年度の受賞者に、朝日新聞イスタンブール支局長の高野裕介記者（42）と共同通信の大熊雄一郎記者（41）が選ばれた。公益財団法人「新聞通信調査会」が1日、発表した。

　高野記者は06年11月に入社。兵庫県警、大阪府警などを担当後、ドバイ支局長を経て20年9月から現職。

　昨年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻が始まる約1週間前に現地入りして以降、今年2月まで計4回、約5カ月にわたり現地で取材を重ねた。

　侵攻5日前には、親ロシア派とのにらみ合いが続く東部ドネツク州の前線近くに入り、紛争がすでに現実となっていることを伝えた。侵攻後は避難者が押し寄せた西部リビウ、首都キーウや、ロシア軍撤退後の北東部ハルキウ州など約35の市町村を訪問。各地で住民の証言を集めて40本以上のルポを発信し、性暴力、拷問、地雷被害、住民殺害など、ロシア軍による戦争犯罪の実態を浮き彫りにした。

　昨年6月のデジタル版連載「息子はどこに　ロシア軍に連れ去られた人々」では、ロシア軍が一時占拠したキーウ近郊の村から消えた青年の足取りを周囲の証言をもとに追跡。ベラルーシを経て、ロシア南部の「収容所」に連れ去られた可能性が高いことを報じた。

　また、イラクでも継続的に取材を重ね、9月には、過激派組織「イスラム国」（IS）戦闘員の妻にされた女性の話などを描いたデジタル版連載「IS後を生きる　消えない苦悩」を発信した。

　新聞通信調査会がつくる同賞委員会は講評で、「凄惨（せいさん）な戦争の現場を取材し、ロシア軍の戦争犯罪の現実も伝えた。『出色のルポ』だと評価された。取材対象に寄り添った迫力のある記事が深く印象に残った」とした。

　高野記者は「この賞をいただくことが、紛争地や被災地にいる市井の人たちの悲痛な声を、より多くの読者の方々に届ける一助になればと思います。ウクライナでの報道は同僚とのチームワークであり、ともに取材をした仲間たち全員に贈られる賞だと考えています」とコメントした。

　同じく受賞する大熊記者は、昨年10月の中国共産党大会に先立ち、習近平総書記が読み上げる活動報告で「台湾統一の目標を明確に位置付ける」と特報したことなどが評価された。

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　ボーン・上田記念国際記者賞　優れた報道で国際理解に貢献した記者に贈られる賞。米国のピュリツァー賞にならい、1950年に創設された。報道を通して日米交流に尽くしたマイルズ・ボーン・UP通信社副社長（当時）と上田碩三・電通社長（同）を悼んでつくられた。現在は公益財団法人「新聞通信調査会」が運営する同賞委員会が選考を担っている。