歩行中に自転車に衝突される事故で昨年1年間に3人が死亡、309人が重傷となり、その約4割が歩道上で被害に遭っていたことが警察庁のまとめでわかった。自転車が走行するのは車道が原則で、例外的に歩道を走行する場合も歩行者の安全に配慮する義務があるが、ルールが徹底されず歩行者が危険にさらされている実態がうかがえる。
警察庁によると、2022年に自転車に衝突されて亡くなった歩行者は3人、重傷を負った歩行者は309人で計312人。死者と重傷者の合計は18年の359人をピークに3年続けて減っていたが、昨年は前年の301人から4年ぶりに増加した。
312人が衝突された場所は、歩道が全体の39・1%の122人で最も多い。歩行者が通るための路側帯の19人(6・1%)と合わせると45・2%を占める。このほか、車道(横断歩道を含む)が73人(23・4%)、交差点内が77人(24・7%)などだった。
自転車は道路交通法上「軽車両」に分類され、子どもや70歳以上の高齢者ら以外は「自転車通行可」の標識がある場合などを除き、歩道を走行せず車道左側を走るのが原則だ。車と同様、信号無視や一時停止違反、飲酒運転なども取り締まりの対象となる。しかし、ルールがあまり守られていないのが実情だ。
昨年に312人の死者・重傷者が出た事故では、自転車の運転者全員に道路交通法違反があった。よそ見などの前方不注意が最多の27・9%、左右の確認を怠るといった安全不確認が24・7%、歩行者が横断歩道を渡ろうとしているのに停止しないなどの歩行者妨害が14・7%と多い。相手が譲ってくれると思うといった判断の誤りや、操作ミス、信号無視などもある。
交通事故全体が減少を続ける中、自転車が絡む事故は昨年は約6万9千件で事故全体の23・3%を占め、この割合は増加傾向だ。歩行者が死傷した事故(軽傷含む)は2905件で、前年比6・3%増加だった。(編集委員・吉田伸八)
減らない自転車事故、その背景は
自転車が絡む交通事故が減らない背景として、違反に対するペナルティーの仕組みが不十分であることが指摘される。
昨年事故を起こした自転車の…