鎌倉や沖縄のマンションに高級車 楽天モバイル元部長不正資金流用か
楽天モバイル(東京都世田谷区)の携帯電話基地局整備事業をめぐり、水増しした業務委託料を同社に支払わせて詐取したとして、警視庁は3日、同社の元部長、佐藤友紀容疑者(46)=東京都港区=ら3人を詐欺の疑いで逮捕し、発表した。警視庁は、佐藤容疑者らが同社から受けた不正な支払いは、2021年12月までの2年余りで約300億円に上るとみている。
他に逮捕されたのは、物流会社「日本ロジステック」(千代田区)の元常務、三橋一成容疑者(53)=神奈川県愛川町=と、物流会社「TRAIL」(港区)社長の浜中治容疑者(49)=東京都中央区。警視庁は3人の認否を明らかにしていない。
捜査2課によると、佐藤容疑者は楽天モバイルの物流管理部長として基地局の物流全般を統括していた21年6月ごろ、三橋、浜中両容疑者と共謀し、楽天モバイルから日本ロジに委託していた基地局の部材の保管費用など約9億2千万円分を水増しするなど、約25億円を楽天モバイルに不正に請求してだまし取った疑いがある。同課は、佐藤容疑者が中心的な役割を担っていたとみている。
同課などによると、日本ロジは19年7月に楽天モバイルと業務委託契約を締結し、アンテナやコンクリート柱といった基地局の部材を千葉県流山市の倉庫で保管。保管に使う面積に単価を乗じて「保管料」を支払うことになっていたが、この面積を実際よりも過大に計上していた。また、日本ロジの再委託先であるTRAILは部材を運ぶ際に確保する車両の数を水増しした「輸送費」を、日本ロジを通じて楽天モバイルに請求していたという。
元部長妻の口座に入金か
佐藤容疑者らは、携帯電話事業に新参入した楽天モバイルが基地局の建設を急速に進めていたことに乗じ、水増し分を事業費に紛れ込ませていたとみられる。
こうして受けた支払いは、TRAILなどを介して佐藤容疑者の妻が代表で京都府城陽市にあった法人「TKロジ」の口座や佐藤容疑者の口座にコンサルタント料などの名目で振り込まれる仕組みだった。
佐藤容疑者や妻は、不正に得た資金をもとに不動産や高級車を購入するようになったとされる。
3.6億円の預貯金
関係者によると、佐藤容疑者は少なくとも神奈川県鎌倉市や沖縄県名護市の高級マンションなどの不動産9件、高級車6台を購入。固定資産税評価額などから算出すると不動産9件は計約6億6300万円、車6台は計5700万円になるといい、実際の購入額はこれより多いとみられる。TKロジ名義でも、不動産1件と車8台の計約3億円相当を取得していたという。また、佐藤容疑者と妻の口座には、計約3億6千万円の預貯金が残されていた。
佐藤容疑者は18年7月に楽天グループに入社し、19年10月に楽天モバイルに転籍。不正が発覚して22年8月に同社を懲戒解雇されていた。TRAILは一連の取引をめぐって東京国税局から70億円超の所得隠しを指摘されている。(山口啓太、高嶋将之)
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