トルコ・シリア地震1カ月、死者5万人超 住宅ローン返済直後に崩壊

トルコ・シリア大地震

アダナ=佐藤達弥
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 トルコ・シリアを襲った大地震から、6日で1カ月が経った。死者は計約5万2千人に達し、両国の推定被害額は393億ドル(約5・3兆円)にのぼる。トルコだけで150万人以上が家を失っており、生き残った人たちは、先が見えない不安の中で暮らしている。

 トルコ内務省の4日の発表によると、トルコでは4万5968人が死亡。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、シリアでは約6千人が亡くなった。

 世界銀行は、住宅などの被害額について、トルコが342億ドル(約4・6兆円)、シリアが51億ドル(約7千億円)と推定。GDP(国内総生産)に占める割合はトルコが4%、シリアは10%にあたるという。

 国連開発計画(UNDP)によると、トルコだけでも150万人が家を失い、50万戸の新しい住宅が必要とされている。UNDPは「トルコの歴史上で最大の地震災害であり、おそらく最大の自然災害でもある」と指摘している。

 トルコ南部アダナのトラック運転手、ベイサル・シェレさん(48)も家を失った一人だ。自宅アパートの壁に亀裂が入るなどし、住めなくなった。

 家族は妻(45)と、7~23歳の子ども3人。東部ワン県に住んでいた2011年にも大地震で自宅アパートが壊れ、テント生活を送った。

 家族で住める家をもう一度買おうと、長いときは1日15時間トラックのハンドルを握り、13年に今のアパートをローンで購入した。

 12階建ての3階が自室。広さは170平方メートルあり、価格は25万トルコリラ(当時の相場で約1300万円)だった。自分の楽しみや趣味は二の次。給料はローン返済につぎ込んだ。

 返済が終わったのは昨年12月。ようやく借金から解放された矢先に、また大地震に見舞われた。

 自然災害による損害を補償する保険に入ってはいたが、補償額は新居を買うにも、建物を修理するにも全く足りない金額だ。新たにアパートを借りるお金もなく、今は家族5人で自家用車の中に寝泊まりする。

 「地震は神が起こしたもので、怒っても仕方がない」。シェレさんは苦しそうな表情でそう話すと、「力ある限り、頑張って立ち上がりたい」と力を込めた。(アダナ=佐藤達弥)

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