第3回目の前で津波にのまれた友人の娘 救えなかった俺に、友人は怒鳴った
福岡龍一郎
「何だ、あれ」
声をあげた仲間の視線の先に目を向ける。海岸近くの一軒家が、ゆらゆらと動き始めていた。
何が起きているか分からなかった。車のラジオから繰り返し流れていた警報が頭をよぎった。汗が噴き出た。
「津波だ! 逃げろ!」
宮城県南端の山元町。海岸から約800メートルの道路で針生(はりゅう)一彦さん(53)が他の消防団員に叫んだ。揺れが収まった後、沿岸部で避難を呼びかけていた。いつの間にか防潮堤を越えた津波が目の前に迫っていた。
なぜ、逃げない 「瑠衣、乗れ!」
ポンプ車に飛び乗った。その数秒の間に、濁流は近づき、経営していた水道工事の会社をのみこんだ。全力でアクセルを踏んだ。
車を走らせ、息をのんだ。数百メートル先の道路に、女の子が立っている。中学校のジャージー姿でリュックを背負い、海を見ている。
「瑠衣(るい)だ」
友人の娘で、赤ん坊のときから知っている。なぜ、逃げないんだ。
車を止めた…
- 【視点】
震災犠牲者の十三回忌を迎えるきょう3月11日。追悼とともに、未来を模索するイベントがこの日にあわせて開催されているのが印象的です。仙台市で世界防災フォーラムがあり、仙台出身の羽生結弦さんがアイスショーを12日まで催しています。きょう夜のWB
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