那須烏山市の防災集団移転 事前移転についての国補助は上限撤廃へ
【栃木】2019年の台風19号で被害を受けた那珂川沿岸の下境、宮原の両地区で那須烏山市が取り組む防災集団移転について、住宅1戸あたり1655万円と定めている国の補助の限度額が撤廃できる見通しになった。移転の促進につながるかが注目される。
那須烏山市は新たな被災の前に安全な地域に移る「事前移転」に取り組んでいる。国は新年度から一定要件下での事前移転の補助の合計に限度額を設けない方針で、那須烏山市のケースは要件を満たすという。
事前移転で市は両地区の対象者の宅地を買い取り、宅地内の家屋や倉庫を補償し、解体費や引っ越し代を補助する。移転先となる新たな住宅団地も整備する。
対象者は自力で移転先を見つけて引っ越すより負担を抑えられる。事業費の約94%が国の補助金や交付税で賄われるため、市にとっても負担を抑えて安全なまちづくりに取り組めるメリットがある。
だが、国は地域ごとに補助対象経費の合計に限度額を設けている。那須烏山市の場合は1戸あたり1655万円だ。
防災集団移転の直近の実施例は、11年の東日本大震災の被災地だ。当時の民主党政権は震災被災地に合計の限度額を設定せず、全額を国の負担とした。
新年度の予算編成に際し、国土交通省が震災被災地の事業費をもとに、事前移転の事業費を試算したところ、1戸あたり4976万5千円だった。
国の補助金が上限まで出ても3千万円以上が自治体の負担になり、国交省は「このままでは取り組みが進みにくい」と判断。新年度は「一定要件下で限度額を設けないことなどにより事前防災を推進する」とした。
市都市建設課は下境、宮原両地区とも那珂川緊急治水対策プロジェクトに位置づけられていることなどから、国が定める一定要件を満たすとみている。
同課は12日に宮原地区の2地域、19日に下境地区の3地域で相談会を開く。相談会では移転候補地を具体的に検討する。ポイントはハザードマップ上の安全性、日常生活の維持、道路や水道の整備方法だ。
同課は住民の合意形成ができた地域については、6月までに候補地をしぼりこみ、12月までに新たな住宅団地の整備計画をつくり、来年3月に国交相による同意を得るスケジュールで進める方針だ。(小野智美)
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