おしゃべり禁止の美容室は塀の中 職業訓練でカットは格安1240円

机美鈴
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 和歌山刑務所(和歌山市)には受刑者の職業訓練を目的とした美容室があり、年間のべ数百~千人が利用する。近年は子どもの医療用ウィッグ(かつら)をつくる「ヘアドネーション」の活動に協力もしている。

 同刑務所の守衛が立つ門を入った先に「白百合美容室」はある。外装はパステルカラーで店内は明るい雰囲気だ。ただ、刑務官が立ち会い、客と受刑者の間でのおしゃべりは禁止されている。

 同美容室は1954年に設置。服役態度や適性を踏まえて選抜され、美容師免許を取得した受刑者が担当する。現在は3人の受刑者がヘアカットやパーマなどの施術にあたる。

 職業訓練が目的のため、カット1240円、シャンプー・トリートメント520円と安価な値段設定。地元客を中心に多い日は10人程度が来店するという。

 白百合美容室は2年前からヘアドネーションの活動にも協力している。NPO法人「JHD&C(ジャーダック)」(大阪市北区)に寄付された髪の毛をもとに、子どもの医療用ウィッグをつくる活動だ。受刑者たちは、全国から届く髪の毛を長さ別に分類する作業にあたる。

 月1回の仕分け日だった2月21日は約1時間かけて266件の寄付を、髪の長さ別に4種類の箱に分類した。髪の毛は中国とタイの工場で加工され、ウィッグになる。

 同刑務所の矯正処遇官の砂山二美(ふみ)さんは「髪の仕分け作業中に涙ぐむ受刑者もいる。手間をかけて伸ばしたそれぞれの髪から受け取るメッセージがあるのだと思う」と語り、「社会に迷惑をかけてきた自覚があるからこそ、社会貢献にかかわる喜びを感じるようだ」とみる。

 髪の毛を託すには31センチ以上の長さが必要で、レターパックで送る。宛先は和歌山市社会福祉協議会、差出人欄は個人情報は書かずにジャーダック事務局の住所を記載するなど、細かい規定がある。詳細はサイト(https://www.jhdac.org/shirayuri_top.html別ウインドウで開きます)。(机美鈴)

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