出馬したら勘当され、批判が殺到 レバノン、クオータ制導入への闘い
国際女性デーの3月8日から、朝日新聞を含む世界の報道機関14社は、ジェンダー平等社会の実現に向けた特集「#Towards Equality」を展開していきます。NPOスパークニュース(パリ)の呼びかけによるもので、各国のジェンダー平等の取り組みなどに関する記事を、世界で同じ時期に発信します。朝日新聞デジタルでも随時、記事を掲載します。今回はレバノンのメディア「ロリアン・ル・ジュール」からお届けします。
中東のレバノンでは国会議員128人のうち、女性はわずか8人しかいない。政府では、24人の閣僚のうち女性は1人のみだ。
2022年の世界経済フォーラムの報告書では、政治分野における女性のエンパワーメントについて146カ国中110位だった。
NGO「フィフティ・フィフティ」は18年から、そうした状況を変えるための活動を続ける。5月の統一地方選に向けて候補者を募り、各地で集会を開催。900を超える申し込みがあり、様々な政治的背景をもつ400人の女性が(支援対象に)選ばれた。
フィフティ・フィフティは彼女たちの活動をサポートし、人前で話すための指導もする。「予算編成や法律などについても教えています」と同NGOのジョエル・アブー・ファルハット代表は語る。地方政府に女性の代表を確保することが重要だとして、クオータ制導入を呼びかけている。
同NGOによると、1050の自治体のうち、女性(代表)が運営しているのはわずか10にすぎない。
ファルハットさんがクオータ制導入に向けた活動を始めた12年当時、意思決定者を説得するのは、「クレージー」な考えだったという。「政治家たちは(クオータ制は)おかしいと思っていた。優先順位が低く、問題にもならないという反応だった」
当時ともに活動し、現在は別のNGOを率いるナダ・アニッドさんは、「政治家たちが、まるで初めてクオータ制について聞いたかのような印象を受けた。私たちの政治制度は、別種のクオータ制である(各宗教の人口割合をもとに宗派別に議席が割り当てられる)宗派主義に基づいているのに」とも指摘する。
彼女たちは113人以上の女性を、18年の国民議会選に立候補するよう説得した。だが、変化は遅い。この選挙で2人の女性が加わり、女性議員は計6人に。22年の選挙を経ても、いまだ8人にすぎない。
大学教授のディマ・アブー・ダヤさんが立候補したとき、家族は彼女を勘当するとの手紙まで出した。「出馬を決めた途端、雪崩のように批判が殺到した」。レバノンでは、議長が女性議員に「座れ、黙れ」と暴言を吐くなど差別的な行為もあった。
道のりは長く障害は多いが、希望もある。進歩社会党が候補者の30%を女性とする枠を設けるなど、昔ながらの政党も女性たちに心を開きつつある。「女性が候補者名簿に載っても、サポートがなければ意味がない」とアニッドさん。彼女たちの取り組みは続く。(レバノン ロリアン・ル・ジュール)
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