第63回為政者による人災の側面も 元トルコ大使が語るトルコ・シリア大地震

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牧野愛博
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 2月6日にトルコとシリアを襲った地震で、犠牲者が5万人を超えました。トルコ政府によれば、トルコ国内だけで全半壊した建物が16万棟を超えたといいます。かつて駐トルコ大使を務めた田中信明氏は、政権の維持を最優先した為政者たちによって引き起こされた「人災」の側面もあると語ります。

 ――今回の地震では建物の各階がパンケーキが重なるように壊れています。

 起きるべくして起きた現象だと思います。私は大使在任中、アンカラやイスタンブールで建設中のビルをよく見かけました。コンクリートが固まる前のまだ骨組みだけのビルを見ると、無数の細い木が階と階の間を支えていました。コンクリートの質が悪いうえに、鉄筋や鉄骨をあまり使っていないからです。

 このため、トルコではちょっとした地震でも亀裂が入る建物が数多くありますし、道路でもあちこちに陥没が見られます。

 トルコにも建築基準法があります。1999年に死者約1万7千人を出したイズミット地震を契機に、日本と同水準の厳格な建築基準を導入しました。

建築基準達成に猶予措置

 しかし、エルドアン政権と与党・公正発展党(AKP)は2018年6月にあった大統領・議会同日選挙の際に、金さえ払えば基準の達成を猶予する措置を取りました。トルコで大きな力を持つ建設業界の支持を得るのが目的だったと言われています。

 ――トルコの建設業は国際的な評価を得ているのですか。

 トルコの建設業は「工期が短…

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