政治的公平振りかざす権力者はまず「3条」を理解せよ 柳澤秀夫さん

有料記事放送法めぐる総務省文書問題

聞き手 編集委員・後藤洋平
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 安倍政権時代の官邸側が総務省に働きかけ、放送法4条が定める「政治的に公平であること」の新たな解釈が加わった経緯を記した総務省の文書。「一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体」で判断するという従来の解釈に加えて「一つの番組でも極端な場合は政治的に公平とは認められない」との新たな解釈を官邸側が求めていたことに、NHKの元解説委員長でジャーナリストの柳澤秀夫さん(69)は「放送法4条の前にある3条を読めば、筋違いだと分かる」と言います。

 安倍政権時代の官邸と総務省が今回のやりとりをしていた時期は、私がNHKで解説委員だった時代とも重なります。高市(早苗総務)大臣の「停波発言」も当時、非常に話題になったし、「え? そんなことができるの?」と感じたものです。

 NHKでは当時から、一つひとつの番組の中で多様な意見を取り入れることは意識していました。特に解説委員にとって、それは原点として考えるべきだと意識してきましたし、報道に携わる周囲の人々にも、そうした考えは定着していた。

 ただ、そうは言っても一つの番組、一つのニュースの中だけでは、いろんな、多様な意見を紹介しきれない場合だってありますよね。だから、従来の解釈である「全体として公平性を担保する」というのが大前提なのです。

 たとえば安保法制反対のデモのニュースを伝えた後に、「一方、これを支持している人もいます」だなんて、ニュースとして成り立ちません。だから、他のニュースや番組で、政権側や与党の政治家なども呼んで意見を聞く機会をつくる。なんでもかんでも個別の番組、個別のニュースの中でバランスを取ろうとすると、一番大事なことである「何がニュースか」という焦点がぼやけてしまいますよね。それは筋違いです。

 放送法については、いま話題になっている4条の前に、3条を読み、理解してほしいです。

 第3条 放送番組は、法律に…

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    曽我豪
    (朝日新聞編集委員=政党政治、教育改革)
    2023年3月8日16時15分 投稿
    【視点】

    相手が政権であれ、野党であれ、厳しく書く時は、当事者や関係者に話を聞き、自分の考えを伝えるようにして来ました。オンレコの場合もオフレコの場合も、それが最低限の取材のマナーだと思うからです。その結果、取材関係が続く人もいれば、君は敵だと言った

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