突然の「身売り」 名門リーガロイヤルが譲れなかった二つの条件

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諏訪和仁
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経済インサイド

 突然の「身売り」表明だった。

 今年1月20日、大阪の老舗ホテル「リーガロイヤルホテル」の土地と建物を米国の投資ファンドに売却すると発表された。

 その20分後、運営するロイヤルホテルの社長の蔭山秀一(66)は、ホテル2階の宴会場「ゴールデンルーム」で記者たちと向き合った。

 「我々のホテルの生い立ちも含めて、おさらいさせてください」

 こう切り出すと、ホテルの歴史を語り出した。

 始まりは、1935(昭和10)年に大阪・中之島に開業した「新大阪ホテル」だった。

 近代的なホテルがなかった大阪に、地元の財界が府知事や大阪市長を巻き込んでつくった。

 65年に今のホテルを建て「大阪ロイヤルホテル」として開業。73年にはタワー棟ができた。

 宿泊者には、時の首相や皇族が名を連ねた。海外の国家元首や王族、ヘレン・ケラーやマリリン・モンローアラン・ドロンといった著名人も滞在した。

 バブル景気に乗って国内はおろか、海外にも進出した。

 しかし、バブルがはじけると、あえなく撤退。借金ばかりが残った。

 最近は、外資系の洗練されたホテルが大阪にも次々とできている。

 それでも、このホテルが持つ信用や品格、親しみやすさは、他と一線を画す。

 1千人以上入れる大宴会場や奥行きのあるロビー。

 和洋中に焼き肉までそろったレストラン。

 独自の味付けで人気のロングセラー「海の幸のピラフ」。

 チャペルにプール、薬局や美容室と、まるでひとつの街のような館内施設。

 そして、いたるところで目にする深みのある緑色「リーガグリーン」。

 土地と建物を売ると500億円を超える資金が手に入るという。借金を返しても手元に十分な金額が残る計算だ。

 一方、投資ファンドが株式の33%を握り、英国のホテル運営大手インターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)と提携することになる。

 蔭山は言う。「地元の期待が大きい。我々はこたえる責任がある」

 そんな大阪の名門ホテルは、なぜ、身売りを決めたのか。

 時計の針を、1年ほど前に戻す。

 2021年の木枯らしが吹く…

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