なぜ落ち込む他人のインスタ あおられる不安と劣等感
山口真一のメディア私評
日本でSNS問題というと、誹謗(ひぼう)中傷やフェイクニュースが真っ先に挙げられることが多い。しかし、海外の人と話していると、「青少年がSNS上で他人の投稿を見て自分と比較した結果、精神にネガティブな影響を受ける」ということを、実に多くの人が問題視していることに気づく。
この問題が大きく注目されたきっかけは、2021年9月にフェイスブック社(現メタ社)の元社員が内部告発を行ったことだ。ウォールストリート・ジャーナルが報じた告発内容によると、10代の女性の32%が、自分の体についていやな気分になった時、インスタグラムがさらに気分を悪くさせたと回答したということであった。インスタグラムはフェイスブックが運営する画像・動画投稿サービスである。また同記事は、13歳でインスタグラムを始めた女性が、フィットネス系のインフルエンサー(影響力のある人)の完璧に見える肉体や生活を見続けた結果、精神にネガティブな影響を受け、摂食障害を発症した事例を紹介している。
実は、同様の問題は告発文書が公開される以前から指摘されていた。例えば、英王立公衆衛生協会は17年に、人気SNSや動画サービスが若者の心に与える不安感や外見への劣等感などのネガティブな影響について、調査を行っている。その結果、最も大きな影響を与えているサービスはインスタグラムであった。また、19年に発表されたオーストラリアの研究者らによる研究でも、SNSアカウント数の多い学生やインスタグラムの利用時間が長い女子学生ほど、摂食障害の傾向があることが示されている。
楽しく交流するためのサービスであるSNSで、なぜこのような問題が起こるのだろうか。理由としては、「人は自身の良い面しかSNSに投稿しない」ということと、「画像・動画が加工されがちであること」の2点がある。SNSは生活の一部を切り取ったサービスである。多くの人は自分の生活の良いところしか投稿しないし、「素敵な生活」を投稿することで人気を得ているインフルエンサーであればなおさらである。また、SNSに投稿する際には、多くの人が画像・動画を加工している。体形を細くしたり、顔のシミを消したりと、様々な加工がなされているのだ。
未成熟であるほど、これらに…