甲府市で所蔵の戦時下ベトナム絵画、専門家が調査
吉沢龍彦
【山梨】半世紀前のベトナム戦争の渦中にベトナム国内で制作され、甲府市内で所蔵されている油彩画や漆絵、絹絵など120点余りを詳しく調べるため、アジア美術の専門家3人が同市を訪れた。「爆撃下で収集された作品群で、質量ともにたいへん充実している」と評価した。
調査に訪れたのは九州大学名誉教授で北九州市立美術館長の後小路雅弘さん、福岡アジア美術館の学芸員桑原ふみさん、ベトナムの絹絵の修復に取り組むNPC研究所(石川県)の学芸員益田ひかるさん。
作品を所蔵する雪江なほみさんが昨年11月、甲府市内で所蔵品を展示したのを知り、「見てみたい」と来訪した。2月26、27の両日、甲府市内の会議室にこもり、作品の包みを一つ一つ解いては写真を撮影し、サイズを測り、タイトルや作者名を確認した。
作品群は、ベトナム美術研究家の故・富山栄吉氏がベトナム戦争中に現地で収集し、雪江さんの夫の進さん(故人)が買い取ったものだという。
まずは作品群のリストを整備し、今後の詳しい研究につなげたいとしている。後小路さんは「富山さんは爆撃をかいくぐって収集を続けた。実物を目にすると、戦時下でも制作を続けた芸術家の息吹がビビッドに感じられる。かつてのベトナムと同じようにウクライナの戦争が続く今こそ、見る価値がある」と話す。
桑原さんは「女性の作品が多く含まれているとみられる。戦争中に女性が置かれていた状況を知る上でも貴重だ」と評価する。益田さんは「絹の布に絵を描く『絹絵』というジャンルを作った代表作家の作品がある。保存状態もよい」と感心していた。(吉沢龍彦)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。