なじみのない球場で行進撮った あれから1年、ようやくかなう夢舞台
第95回記念選抜高校野球大会が18日、阪神甲子園球場で開幕する。甲子園での開会式はここ数年、新型コロナウイルスの影響で主将だけが行進するなど、限られた形式となった。今大会はコロナ禍前の2019年夏の甲子園以来、選手全員が参加し、グラウンドを一周する「日常」が戻ってくる。
21、22年の選抜の開会式は、初日に試合がある出場校の選手だけ参加し、外野から内野に行進するのみだった。他の出場校は事前に撮影した行進の様子を大型スクリーンに流した。夏の甲子園も、21年は全選手が参加したものの、外野から内野に行進するのにとどまった。22年は主将だけが参加した。
コロナ禍の甲子園に出場し続けながらも、開会式のにぎわいを知らない選手たちがいる。特別な思いで今回の開会式を待っている。
21年の選抜から5季連続で甲子園へ出場する敦賀気比(福井)。
「ようやく全員そろって入場行進ができる」。中心打者の高見沢郁魅(いくみ)選手(3年)は、うれしそうだ。
開会式用の動画は合宿先のなじみのない徳島県の球場で撮影した。仲間とカメラに収まりながら、「俺、何しているんだろう」と思った。
昨夏の甲子園。開会式のリハーサルに参加し、各地の選手の誇らしげなたたずまいに興奮が抑えられなかった。ところが直前になって「主将のみ参加」と変わり、高見沢選手は開会式に参加できなかった。
高見沢選手は「仲間と甲子園の土をしっかり踏みしめたい」と声を弾ませた。
浜野孝教(たかみち)主将(3年)は小学生の頃から、球児たちが一糸乱れず行進する姿に憧れていた。
甲子園のメンバー入りは3回目。昨夏の甲子園はホテルで1人、主将が行進する様子をスマートフォンで見ていた。無念だった。
「(全員そろっての開会式が)当たり前ではないと気づかされた。出場校らしく正々堂々と入場行進したい」
大阪桐蔭も、21年の選抜から5季連続で甲子園へ出場している。前田悠伍主将(3年)は昨年の選抜優勝の立役者。昨年は春夏いずれも主力としてベンチ入りしながら、開会式を経験できなかった。
何度も出場しているのに行進できないもどかしさ。「自分たちの代で実現したらいいな」と感じていた。「全員で開会式の舞台を堪能したい。しっかりとした姿を行進で示せたらと思います」
村本勇海(いさみ)選手(3年)も、そんな一人。昨夏の甲子園にも出場した。「入場行進をしたかったという気持ちは当然あった。今回は両親や友人が甲子園に来てくれる。頑張っている姿を見せたい」
西谷浩一監督は「試合はもちろんだが、開会式の入場行進も選手たちにとっては思い出深いものになる。全国にいる卒業生や応援してくれるみなさんに、選手たちがしっかりと行進することで感謝の気持ちを伝えたい」と話した。
10日、選抜の抽選会があり、両校は大会第3日の第3試合で対戦することが決まった。(マハール有仁州、松永和彦、岡純太郎)
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