震災遺構「直さないと廃墟に」 保存に費用の壁、持ち出し数千万円も

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星乃勇介 編集委員・石橋英昭
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 東日本大震災からの復興が進む沿岸各地で、津波の傷痕を刻んだまま残された「震災遺構」は、災害の教訓を伝える貴重な財産だ。だがこれらの施設に、早くも「時間」という危機が忍び寄っている。風雨にさらされて傷みが進み、維持・管理は自治体の重荷になっている。歴史の証人は、早晩朽ち果てる運命なのか。

 宮城県石巻市大川小学校は、一昨年7月に遺構として公開された。

 児童・教職員84人が犠牲になった教訓を学ぼうと、見学者が連日訪れる。校舎には入れないが、切断された鉄筋柱や水で持ち上げられた天井が、津波の力を雄弁に語る。学びやの跡は、震災前の穏やかな日常も想起させる。

 大川小保存を巡っては、「建物が残るのを見たくない」という遺族や住民がいて賛否が割れた。そうしたことも踏まえ、市はできるだけ手を加えない「存置保存」の形で遺構整備を決めた経緯がある。

 だが、この12年間の変化は大きい。破れた窓から雨が吹き込み、教室にはコウモリがすみつく。伝承団体の要望を受け、市は新年度に1千万円の予算を組み、劣化対策に乗り出す。「修繕しないと廃虚になってしまう」として、長期保存へ一歩踏み出した形だ。

 まだ、様子を見ている施設も多い。

「将来的な修繕規模 予想つかない」

 福島県浪江町の請戸小は海か…

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