ロシアになくて中国にはある、戦争しにくい国の特徴 鍵はコスト意識

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聞き手・真野啓太
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 なぜ戦争が起きてしまったのか?

 ロシアがウクライナを侵攻したことに、今なお納得のいく理由はない。ただ国と国が利害関係や領土、歴史観をめぐって対立するのは、よくあることだ。そう考えていくと、逆の疑問にぶつかった。

 なぜ国家は戦争をしないのか?

 国際政治学者の多湖淳・早稲田大学教授は、「戦争には莫大(ばくだい)なコストがかかるからだ」と言う。多湖さんは著書の「戦争とは何か」(中公新書)で、過去の戦争データから国際政治を理論的に分析する手法を紹介した。戦争の「歯止め」になるものとは何か、を聞いた。

 ――国と国は対立を抱えていても戦争が起きることは珍しくなりました。なぜでしょうか。

 2度の世界大戦を経て、戦争はコストがかかるものだという認識が広がったということが大きな理由ではないでしょうか。ひとたび戦争になると、兵士や市民が犠牲になり、建物やインフラが破壊されます。戦費に圧迫されて教育や福祉の予算が縮小され、戦争がなければ起きていたであろう経済活動もなくなります。

 だから通常、国家の指導者は戦争を避けて外交で紛争解決を図ります。国家の「コスト意識」に注目する「合理的戦争原因論」と呼ばれる理論です。コストよりも得られる利益が大きい場合、戦争が魅力的な選択肢に見えてしまう、と考えます。

 ――プーチン大統領はどんなコストを払って、何を得ようとしているのでしょうか。

 あくまで理論による分析です…

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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2023年3月15日8時18分 投稿
    【視点】

    戦争とコスト意識の問題は、長らく国際政治の大きな課題だったと思うが、コストだけで説明しようとするのは、やはり限界があるような気がする。確かにロシアがNATO諸国とのエスカレーションをコントロールしているあたり、コストで説明出来る部分もあるよ

    …続きを読む