相談するのは「逃げ」? 心折れそうな新人のSOS、察知したのは…
「夜勤、大変だったね。僕も新人のときはうまくいかないこともあったけれど、やってこられた。心配しなくても大丈夫」
特別養護老人ホーム(特養)「新宿和光園」(東京都新宿区)の一室。介護長の伊藤敏(つとむ)さん(39)が、介護職員の藤原友里恵さん(24)に語りかける。
2022年11月。この特養で働き始めて3カ月目を迎えていた藤原さんの目から、涙がこぼれた。「新人の私のことを気にかけてくれる人がいる。そばに味方がいる。そう思うと、ほっとして、うれしかった」
藤原さんは22年4月、同園を運営する社会福祉法人に就職した。研修後、高齢者24人が暮らすフロアの担当になった。
夜勤を1人で任されるようになってまだ間もない夜、ナースコールが鳴り続けた。
「水を持って来て」という、ある入居者からだった。体調を気遣い、多量の水は控えたほうがいいと繰り返し説明したが、コールは夜通し続き、何度も水を運んだ。
水を飲み過ぎないよう、説得するべきなのか。希望にできるだけこたえるべきか。「どうすればいいかわからず、ひたすらつらかった」という。
大学は社会福祉学科に進み、高齢者を直接支えたいと望んで就いた介護職。でも、心が折れそうになることは、それまでにも何度かあった。しかし、だれかに相談しようとは考えなかったという。「一人前の介護職員として対応できるのが当たり前。相談するのは『逃げ』だし、同期に負けるような気がした」。「慣れなきゃ」と自分に言い聞かせていた。
ただ、介護の記録に、夜勤中…