第6回有権者の「好き嫌い」が生んだ1強多弱 識者が提唱する「戦略投票」
漂流を続ける日本政治をどう考えればいいのか。有識者に聞いた。
高安健将・成蹊大学教授
――英国でも、政権交代で負けた政党が低迷した。
「1979年からのサッチャー政権時代から20年近く続いた保守党長期政権下では、第三の政党が台頭し、野党の労働党が分裂した。90年代後半~2000年代の労働党長期政権で野党・保守党は、移民など特定の問題に固執した。野党が弱体化し、与党への対抗策を示せない、といった野党の状況は今の日本と似ています」
――それでも英国は、2大政党が続いています。
「小選挙区制だから、という面があります。政党は分裂したら確実に選挙で負ける。小選挙区制によって保守、労働の両党が守られている面がある。英国でも、政党を離脱して独立候補になる人がいます。特に19年はEU離脱問題があり、労働党からも保守党からもかなりの議員が出て行った。でも、結局、選挙で勝てなかった」
――日本も衆院は小選挙区制です。
「小選挙区と比例代表の並立制をとる日本の選挙制度は、英国とは似て非なるものです。小選挙区だけであれば、最大得票の1人だけが勝つので、複数の野党を淘汰する力が働きます。一方、比例代表制があることで、弱い政党には分裂する力がかかる。選挙区では当選できない候補も、小さい政党から立候補すれば当選の可能性が高まるケースがあるからです。野党が『多弱』になる要因のひとつです」
――日本は2大政党を目指し、09年に政権交代が起きた。
「二つの政党が競争するには、同じサイズ、同じ力の政党同士が拮抗(きっこう)する必要があるが、日本は前提条件を欠いていた。自民党は長年地域に根ざしてきた確固たる政党です。一方、民主党は『対自民』の立場を前提にせざるをえなかった。『私たちは、この主張のために存在している、この人たちのためにいる』という共通の理解が浸透せず、政党として一つにまとまる力が弱かった」
――野党が不利な条件はほかにもありますか。
「政党間がフェアに競争する…