60歳以上の市民1万9千人の住所など警察が閲覧、市民には伝えず
特殊詐欺被害を食い止めようと、大阪府警高石署が高石市の住民基本台帳を閲覧し、60歳以上の市民約1万9千人分の名簿を作成した。自治体は閲覧を許可した場合、請求者の公表が義務づけられるが、同署は「捜査で必要」としたために公表の対象外となる。市民の受け止めは様々だが、専門家からは手続きの透明性を懸念する声が上がる。
署によると、閲覧したのは60歳以上の市民の氏名、住所、生年月日、性別の4項目。署が昨年9月に閲覧請求し、市が許可。その後、署員が昨年9~11月、市役所に24回通って約1万9千人分を書き写し、名簿は署内に保管している。
署は詐欺事件捜査での活用を想定する。渡辺信人副署長は「他人名義のキャッシュカードを持つ人物に職務質問し、『預かったものだ』と弁解された場合、市役所が閉庁しているとカード名義人の住所などを照会できず、捜査を進めるのが難しかった。名簿があれば本人に確認し、容疑者の検挙につなげられる」と説明する。
元々、市に閉庁時間帯の照会について相談した際、台帳の閲覧を提案されたという。現時点で名簿を活用した事例はなく、渡辺副署長は「目的は防犯と住民の財産を守ること。目的外使用や漏洩(ろうえい)がないよう厳重に管理している」と話す。
警察署が「詐欺事件捜査」を理由に、市民の個人情報を集めていました。対象は、署が「被害者」になるかもしれないと考えた高齢者ら。住所などを閲覧させていた市は、住民にそのことを伝えていませんでした。法令を読み解き、市民や専門家に取材しました。
市市民課の岡礼樹(ひろき)課長も「法に基づいて対応した。断る理由はない」と述べる。市個人情報保護審査会には諮っていなかったが、弁護士と協議しながら、対応したという。
住民基本台帳法は、国や地方…