自閉症の娘の代わりに投票、母に有罪判決 公職選挙法の罪で在宅起訴
大阪市を廃止して特別区に再編する「大阪都構想」の是非が問われた2020年の住民投票で、自閉症の娘の代わりに投票用紙を投じて偽造したとして、公職選挙法違反の罪に問われた母(60)=同市淀川区=の判決が15日、大阪地裁であった。矢野直邦裁判長は「娘は投票の意思表示をしていなかった」と述べ、罰金10万円(求刑罰金20万円)の有罪判決を言い渡した。
公選法の定めでは、心身の障害などによって自筆できない人は、投票所の職員に「代理投票」をさせることができる。一方、親族ら同伴者には認められていない。選挙の公正などを確保するためだが、刑事責任を問われたケースは珍しく、判断が注目されていた。
区選挙管理委員会から被害申告を受けて捜査していた淀川署から書類送検を受けた大阪地検は、市内の期日前投票所で20年10月、自閉症の娘(23)の投票用紙を投票箱に投入し、偽造した罪で母を在宅起訴した。公判では、正当な理由がないのに娘の投票に干渉した罪にあたる、とも主張した。
これに対し、弁護側は、母が代理投票の仕組みを十分に理解しておらず、違法性の認識はなかったとして無罪を主張。投票所に障害者福祉に詳しい職員を充てるような配慮などがなかったとして「起訴は不当だ」とも訴えていた。
母は被告人質問で、投票の経過について「(娘は)投票の意思表明をしたが、認めてもらえなかった」などと説明。娘が慣れない状況でパニックになるのではないかという焦りもあったと述べていた。(松浦祥子)