「羽生君、おぼえているかい?」 戦い終えた君へ 寄稿・先崎学九段
世代を象徴する両雄が初めてタイトル戦で激突した将棋の第72期王将戦七番勝負は12日、挑戦者の羽生善治九段(52)が藤井聡太王将(20)に2勝4敗で敗退し、幕を閉じた。羽生九段にとってはタイトル獲得通算100期をかけた勝負だった。戦い終えた君へ――。小学生時代から羽生九段と親交が深い先崎学九段(52)が寄稿した。
◇
羽生君、お疲れ様。王将戦は残念だったね。負けたけどとても勇敢だった。自分の子供のような年齢の相手に、真正面からぶつかってゆく姿はとてつもなくカッコ良かったよ。最高の将棋指しだった。
まだ疲れてるかな。もう昔のように無理はきかないよね。僕はね、最近対局の後でもぐっすり眠れるようになったよ。若いころは頭が冴(さ)えて一睡もできなかったのにね。でも翌日の疲れはどんどん増してゆくんだ。
出会ってから四十年以上にな…
- 【視点】
将棋について私は全くの門外漢ですが、この先崎九段の寄稿にグッと引き込まれてしまいました。羽生九段と先崎九段は同じ1970年生まれの52歳。立場は違えど、同じ世界で頑張り続ける同い年の2人にしか共有できない「空気」みたいなものが行間からあふれ