自閉症の娘に「投票」を経験させたかった母 職員との押し問答の末に
「都構想で賛成が多かったら、住所が変わるかもしれないよ」
「いややー」
大阪市を廃止し、四つの特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票が行われた2020年。テレビで都構想のニュースを見ていた市内の母(60)は、何げない娘の反応をきっかけに、シングルマザーとして育ててきた自閉症の娘(23)に「投票を経験させたい」と考えるようになった。環境の変化が苦手な娘の本心のように思えたからだ。
娘が通っていた特別支援学校では、クラス委員長を選ぶ選挙もあった。「政党や議員を選ぶ選挙は難しいが、賛成か反対かを選ぶ投票ならできるかも」。住民投票は、一つのチャンスだった。区役所に電話で問い合わせると、代筆で投票できると説明を受けた。
期日前投票所の区役所に出かけた。娘も何度か訪れたことがある。投票のために区役所へ行くことを事前に伝え、パニックにならないように努めた。だが、区役所は想定していたよりも騒がしく、娘は耳たぶを折り曲げるようにして両手で耳をふさいでしまった。
心身の障害などによって自筆できない人たちが、代わりに投票所の職員に候補者名などを書いてもらう「代理投票」。十分に周知されず、娘の代わりに投票した母が公職選挙法違反の罪で在宅起訴され、大阪地裁で15日に判決を受ける事態となった。代理投票する際、何を守る必要があるのか。投票所を運営する自治体の支援は十分か。4月の統一地方選を前に、取材した。
事態は悪化した。投票所の受…
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- 【視点】
日本で投票の権利がありながら、実際にはふさわしく意思を示すために様々なハードル、また、制度上の課題があり、それを活かせていない人が少なくない、という事実を、どれぐらい意識できているだろうかと考えさせられる記事でした。 選挙権は、個人と
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