長編アニメ映画祭の夢と不可能性(小原篤のアニマゲ丼)

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 「この映画祭は、アート系の短編じゃなくエンタメの長編アニメに特化したコンペにしていく」と押井守審査委員長は昨年5月の会見で言いましたが、「それにはすごく高いハードルが二つあって無理では?」と私は質問で指摘。結果は、ほぼアート系の長編アニメのコンペティションになりました。22日まで新潟市で開催中の第1回新潟国際アニメーション映画祭(NIAFF)のことです。ただし、私はこのコンペに満足です。同意する同好の士もいらっしゃるでしょう。

 仏アヌシー、クロアチアのザグレブ、カナダのオタワなどの歴史あるアニメ映画祭はアニメ作家の短編を集めたコンペが中心。商業アニメ大国であり劇場用長編作品を量産しているこの日本において、世界各国の新作長編が覇を競うコンペを開催し、日本から、新潟から世界にアニメ文化を発信しようという大義を掲げてNIAFFは立ち上がりました。仏からリモートで会見に参加した数土直志プログラム・ディレクターは「欧州の伝統的な作品とハリウッドのビッグムービーを並べて共通の面白さを探っていく」と夢を語り、真木太郎ジェネラルプロデューサーは「コンペ部門はジャパンプレミア(日本初公開)にこだわっている」と方針を述べました。

 でもねえ。アニメジャーナリストとして活躍する数土さんとベテランプロデューサーの真木さんには言わずもがなですが、会見に集まった(アニメにあまり詳しくないかも知れない)記者たちのために私はマイクの前に立ちました。

 「かなりのミッション・インポッシブルです。日本各地から、世界から観客を呼ぶには公開前の作品を集めなければならないが、まず日本のアニメ映画は劇場公開の日ぎりぎりまで完成しない。一方のハリウッドアニメは、海賊版を作られるのを防ぐため、そして綿密な宣伝プランに従うため、公開前の露出は慎重で厳格。メジャーな作品ほどコンペに来てもらうのは難しいのでは?」

 真木さんの答えはこう。「ま…

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