「癒し」「肯定」からの逃走 山田航「短歌時評」最終回
3月19日付朝日歌壇・朝日俳壇面のコラム「短歌時評」をお届けします。歌人の山田航さんが、昨今の「短歌ブーム」で現代短歌が「疲れた読者を肯定する」実用的なものとして受容されることへの危惧を表明しています。2021年4月から2年間担当した山田さんによる最後の短歌時評です。
短歌時評
書評家・三宅香帆が新潮社のPR誌「波」に「物語のふちでおしゃべり」という連載を持っており、二月号では「令和の短歌ブーム」を一般向けにかいつまんで解説した内容となっている。
その中で、「サブカル系――ちょっと文化的でお洒落(しゃれ)な趣味を持つ友人たちの間で、短歌が流行(はや)っている感覚がある」と書かれている。この「サブカル」は「サブカルチャー」と似て非なるもので、オタクカルチャーとの対比で形成された都会的な大衆文化を指すときの意味合いで使われる言葉だ。昨今の「短歌ブーム」は、ブームというよりも「短歌のサブカル化」という文化現象が表面化しているとみた方がいいのかもしれない。
「SNSと短歌は相性が良い…