第42回にんまりの敵将、上をいった大谷翔平 投げて打ってバントも当たり前

山口史朗
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(WBC準々決勝 16日、日本9-3イタリア)

 大谷翔平(エンゼルス)が打席に入ると、イタリア内野陣が動いた。遊撃手が二塁より右へ、三塁手が遊撃手の定位置付近へ。

 「彼のような打者を相手に守るのはいつも難しい」とは、イタリアのピアザ監督。かつてドジャースで野茂英雄とバッテリーを組んだ。捕手出身らしく、データを駆使して極端な「大谷シフト」を敷いてきた。

 一回、大谷はその網にかかった。普通なら中堅へ抜ける痛烈な当たりを遊撃手に好捕された。「あれは意図するプレーでした」と、敵将がにんまりしたのはしかし、この時だけだった。

 大谷はさらに上をいく。次の打席は三回1死一塁。再びシフトを敷いてきたのを見るや、こう考えた。

 「無理に引っ張った打球が(野手の)正面でゲッツーというのが最悪」

 初球。誰もいない三塁側を狙って、バントで転がした。慌てて処理した投手が一塁へ悪送球(記録は安打と失策)。一、三塁と好機が広がり、チームの一挙4得点の足がかりとなった。

 「リスクを回避しながらハイリターンが望めるチョイスをしたつもり」「チームの勝利が優先。あの場面で自分のプライドはなかった」と大谷はさらり。

 ピアザ監督は、攻撃が終われば投手を務める選手が、バントをして全力疾走するとは警戒していなかった。「我々の守備を瞬時に理解して、それにあらがおうとした。素晴らしい」

 二刀流は、はや11年目。この日は最速164キロを投げ、打って走ってバントもした。大谷にとってはそれも、当たり前のことだ。山口史朗

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    中川文如
    (スポーツ部次長)
    2023年3月19日18時19分 投稿
    【視点】

    WBC準々決勝で大谷翔平選手が繰り出した、衝撃のバント。その背景を描いた同僚の記事です。 唐突ですが、試合を振り返るメイン記事は、ざっくり申し上げて以下の3パターンに大別できます。 パターン①:選手の物語 パターン②:チームの

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