第2回プーチン氏は同じ過ちを犯した ブレマー氏が語るイラク戦争と世界

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ニューヨーク=中井大助
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 2003年3月20日、米軍が侵攻して始まったイラク戦争は、米国の威信を揺るがし、国際秩序を混乱させた。ロシアによるウクライナ侵攻を経て今に至る20年間の世界の歩みに、どのような影響を及ぼしたのか。国際政治学者のイアン・ブレマー氏に聞いた。

 ――イラク戦争は、世界にどのような影響を与えましたか。

 戦争が誤った情報に基づいて始まったことは、米国にも、国際社会にも大きく影響しています。ブッシュ政権は侵攻の理由として、サダム・フセイン政権が(国際テロ組織)アルカイダと協力していると主張しましたが、これは事実と異なりました。結果的にイラクは内戦状態となり、アルカイダと連携したテロリストが多く生まれました。侵攻をした米軍の兵士にとっても、イラク社会にとっても、戦争で失ったものは大きかったのです。

 イラクでの混乱の結果、米国人は自国のとらえ方を変えました。米国が「世界の警察官」を果たす超大国であり、民主主義を広めていく役割を果たしていると信じていた人の多くは、内向きになりました。

イラク戦争が変えた米国人の考え方

 ――世界の米国に対する見方も変わったのでしょうか。

 米国が偽善的であり、自分たちは力を好きなように使うのに、他の国が行使することは認めないと受け止められるようになりました。これにより、米国の指導力に陰りが生じました。

 私自身も当時のパウエル国務長官を尊敬しており、彼が根拠を説明したことで侵攻を受け入れやすくなっていた。しかし、その根拠は全くの虚偽でした。米国は今も、国際社会とイラクの人たちに対し、大きな責任を負うと考えています。

 ――03年と比べ、米国の相対的な力は低下しました。ブレマーさんはリーダーのいない「Gゼロ」の世界だと表現しています。この状況に、イラク戦争はどれほど影響しましたか。

世界はいま、ロシアによるウクライナ侵攻に揺れています。記事後半ではイラク戦争がロシアのプーチン大統領に与えた負の影響について語っています。

「Gゼロ」が生まれた三つの流れ

 「Gゼロ」が生まれた流れは…

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