「ぬるま湯」の日本は恵まれている? 社会学者が語る若者の海外脱出

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聞き手・真鍋弘樹
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 日本の将来を不安視し、沈みゆく経済のリスクを避けようと、外国への移住を考える人が増えているようです。その一方で、「海外脱出」には、言葉や就業の壁も厳然として存在しています。「ぬるま湯と批判されても、日本は相対的に恵まれている」と考える社会学者の鈴木謙介さんに話を聞きました。

 ――「海外脱出」に希望を感じる人が増えているようです。

 「その選択肢を現実的に考えられる人たちはごく一部でしょう。加えて、『海外』という言葉自体、日本以外の社会をひとまとめにする言い方ですが、アジア、北米、欧州などで条件はまったく異なります」

 ――日本の将来に不安を抱く若者が多いのでしょうか。

 「そうだとしても、国内よりも海外に希望があるとは必ずしも言えません。韓国は海外志向なのに日本は遅れていると言う人もいますが、これは意識の問題ではない。韓国は内需が小さく、就職も競争が激しいので、海外に出ざるを得ないのです」

 「それに比べて日本は国内市場が大きく、必ずしも海外に出る必要はありません。人口が減少していると言っても、世界的に見れば巨大な国内市場を持つ分野も多い。ぬるま湯だと批判する人もいますが、日本は相対的に恵まれていると思います」

 ――グローバル化が進む今、若者が海外に活躍の場を見いだすのは悪いことでしょうか。

 「海外に行くこと自体は否定…

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    牧原出
    (東京大学先端科学技術研究センター教授)
    2023年3月20日11時56分 投稿
    【解説】

    2017年にイギリスの政治分析で、somewheresとanywheresの対立が話題となりました。一生地元で生活していく人たちと、世界中どこでも生計を立てられるグローバル・エリートとの分断が、Brexitのような政策を生み出したという議論

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    真鍋弘樹
    (朝日新聞フォーラム編集長=社会、国際)
    2023年3月20日10時10分 投稿
    【視点】

    日本の将来に対する不安や閉塞感からか、海外脱出という言葉が最近注目されていますが、そんな風潮に対してひと言、とお願いして実現したインタビューです。地に足のついた論考で、私自身、考えを整理する大きな助けになりました。 インタビューのポイ