子育て起業家が「詰んだ」と感じるとき いまも続く母親追い込む状況

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聞き手・高重治香
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 少子高齢化が進み、介護の担い手の不足が懸念されています。人手不足を補うと期待されるのがテクノロジーの力。宇井吉美さん(34)は介護ベンチャー社長として、3歳と6歳の子どもを育てながら会社を引っ張っています。経営と子育ての両立や、介護と育児の課題などについて聞きました。

 介護にテクノロジーを取り入れるケアテックの会社「aba(アバ)」を経営しています。排泄(はいせつ)のタイミングの予測や、においで通知できる「ヘルプパッド」という製品を扱っています。現在100ほどの介護現場で使われています。大学の在学中に開発を始め、2011年に会社も立ち上げました。

 私が育った地域では、20代半ばまでに結婚し出産する人が多かったので、私にも「子どもを産まなければ女として認められないのではないか」くらいの感覚がありました。

うい・よしみ

 1988年生まれ。千葉工業大在学中に起業。介護の仕事も経験し排泄(はいせつ)ケアシステムを開発した。

 大学の研究室の仲間と結婚し、子どもはいつか欲しいとは思っていました。ただ、28歳で妊娠した時は製品はまだ開発段階で、子どもは早いと思っていたんです。子ども1人だけでも大変だったのに、その後に予想していなかった2人目も妊娠しました。しかも資金調達真っただ中でした。経営に全面的には関わりにくくなる状況をつくり、妊娠は「罪」ではないかと思い詰めました。起業家の妊娠で投資が中止になった話も聞いていました。友人の起業家が投資家から、「投資資金が回収できるまで『妊娠出産はしません』と契約書に書きたいくらいだ」と言われた、という話もあります。

妊娠した宇井さんは、投資家にかけられた言葉で、ある「思い込み」に気付いたといいます。後半では、介護と育児をとりまく状況の違いと共通点について語ります。

 私の場合は投資家に妊娠した…

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