主役はこころの病の人々 「ラグーナ出版」の社長は悩める青年だった
統合失調症やうつ病などの精神疾患は、日本人の5大疾病の一つに数えられる。北の「浦河べてるの家」と南の「ラグーナ出版」では、精神的な不調を抱える人たちが主役を務める。べてるの家は北海道の社会福祉法人で、当事者が生きづらさを語り合って対処法を探る「当事者研究」で知られる。ラグーナ出版は鹿児島市にあり、当事者の視点と言葉でつくる雑誌「シナプスの笑い」を年3回、出版している。
雑誌名は、こころの病のもととされる脳の神経伝達物質が行き交う場「シナプス」と、回復後に生まれる「笑い」に由来する。当事者の投稿や座談会、「食とメンタルヘルス」などの特集を組み、精神疾患による事象を「体験知」として発信する。
社長の川畑善博さん(55)は、精神保健福祉士の資格を持つ。
ラグーナはイタリア語で「干潟」。価値がないとして埋め立てられる干潟だが、多様な生物が共存して海水を浄化している。一見不毛なようでも大切な役割を担っているという思いを込めて社名にした。
ラグーナ出版は、就労継続支援A型事業所も運営する。モットーは「あせらず ゆっくり 確実に 健康に」。それが精神的に不調な人を安定させ、継続して働けるようにしている。
人を大切にする企業風土と安定した業績が評価され、ベストセラー「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズ(あさ出版)にも取り上げられた。
川畑さんも、かつては悩み多き青年だった。
鹿児島の高校から東京の大学…
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら