美しさとは? 立ち止まって問うミラノ・コレクション 23年秋冬

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編集委員・高橋牧子
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 美の現在位置とは? 2023年秋冬ミラノ・コレクションは、約3年間のコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻から丸1年を経て、生活者の価値観が大きく変容し揺らぐ中、現時点でのファッションの美や本質を改めて確認するような動きが目についた。多くのブランドできれいなフォルムと素材との関わりや色の吟味がみられ、手仕事が強調され、心身を保護するようなデザインが増えた。

 プラダが挑んだのは「美を改めて概念化して、再考し、新たに見いだすこと」。その結果として、衣服は記号であり、心づかいの美しさを表すものと再定義した。テーマは「TAKING CARE」。ケア(手当て、気づかい)を象徴するとして様々なユニホームと華麗なイブニングウェアの要素を合体。看護師の制服に似た立ち襟付きの白いドレスは後ろの裾が優雅なトレーンを引き、ミリタリーシャツの肩章はかれんな花弁の形。

 ダッフルコートの背に上品なふくらみをつけ、丸首のシェットランドセーターに合わせたスカートには、ウェディングドレスの花飾りが縫い付けられる。ありそうでなかった感覚。着ることを喚起するような新しい意味をすがすがしく感じさせた。

 ラフ・シモンズと共にデザインするミウッチャ・プラダは「現実の世界は、どんなファンタジーよりもはるかに豊か。(中略)私たちがしていることの意味は、日常に重要性をもたらすこと」とコメントした。

 ジル・サンダーもデザインの新しさよりも、服の上質な仕立てや素材の質感、柔らかい色合いが印象的だった。彫刻的なシルエットだが、ふわりとエアリーなダブルフェースのコートなど。とぎ澄まされたシャープさの中でサクランボ柄がウィットをにじませる。

 女性の自然な美しさを見せる…

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