「ダメな人」が頼る「ひろゆき的ネオリベ」 彼らを非難できるのか
文芸評論家
藤田直哉のネット方面見聞録
私たちに重大な意味を持つネット上の現象を中心に、文芸評論家の藤田直哉さんが論評する連載です。
「ひろゆき論」が話題である。ひろゆき(西村博之)は、匿名掲示板の2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)の創設者で、若い世代にはYouTuberやインフルエンサーとして知られている。彼の発言を精査した論が成蹊大教授の伊藤昌亮によって書かれ、岩波書店「世界」3月号に掲載され、ウェブでも公開された。
ひろゆきが「論破」芸で人気を得ている原因として、伊藤は「プログラミング思考」と「優しいネオリベ」というキーワードを挙げる。イーロン・マスクなど、現代社会の成功者たちにはプログラミングにたけた者が少なくない。プログラミングは、ひろゆきいわく、「論理的思考力、創造性、問題解決能力」を身に付けさせてくれる。いいことである。
「優しいネオリベ」とは、弱肉強食のネオリベラリズム社会でうまくいかない「コミュ障」「ひきこもり」「うつの人」などの(ひろゆきの表現で言う)「ダメな人」に対し、プログラミング思考を身に付け自助努力で稼いで成功することを指南する態度のことである。「リベラリズム」の福祉の網の目からこぼれ落ちたと感じやすい人々が、ひろゆきに希望を見いだし支持していると伊藤は分析する。
東京・赤羽の団地で育ったひ…