「林業をしながら森林塾開く」NPO法人代表の北山郁人さん

加藤真太郎
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 今月16日、雪がまだ1メートル近く残る標高約1千メートルの「上ノ原『入会(いりあい)の森』」(群馬県みなかみ町藤原)に、NPO法人「奥利根水源地域ネットワーク」のメンバー4人が入った。率いるのは、代表の北山郁人さん(48)。研修1期生で、町内で先駆的存在だ。

 名古屋市出身。大学時代は巨木を追い求め、巨木をテーマにした彫刻づくりや調査に没頭した。

 「林業をしながら、自然体験ができる森林塾を開きたい」と2009年、多摩川源流に近い東京都奥多摩町から移住した。

 藤原は積雪2メートルを超える豪雪地帯。秋冬に木を切り、雪が積もる前に丸太を運び出す。春夏はまきづくりや作業道づくりに励む。「木が密集しすぎると地面に光が入らず、下草が生えない。1本の巨木が周りの木々の成長の邪魔になることもある」と北山さん。「山への負担を最小限にするために、作業道をどこにどう通すかが重要だ」

 メンバーは男女約10人。ラフティングガイドや農業など本業は様々で、空いた時間に山に入る。北山さんは「色んなことをして暮らしたい人がみなかみには多く相性がいい」と話す。

 間伐した木は余すところなく使う。自宅前には、ミズナラなどから出た板材用の丸太やまき、クラフト作品用の枝木が積んである。

 手入れをした里山で自然体験をしてもらおうと、NPOでは首都圏の学校や団体を多く迎え入れている。

 ノコギリで木を切ったり、間伐体験をしてもらったり。トレッキングや、五感で木々に触れながら内省する「リトリート」も開いている。「茅場(かやば)」の再生にも取り組み、収穫した茅は歴史的建造物のかやぶき屋根に使われている。

 北山さんは近くのスキー場などに森林整備を提案するなど、活動の場を広げている。

 生物多様性が豊かな里山を増やそうと、昨年開かれた県主催の「ぐんま森林活用アイデアコンテスト」では、自力で管理できない山主から森を借り受けて利根川流域の人々に1ヘクタール単位で貸し、ともに管理するという取り組みを提案。猟師が設置したわなで野生動物を捕獲してジビエにしたり、ミツバチの巣箱を設置したり。間伐材に菌を植え付けるキノコ栽培や、秘密基地づくりなどの活用案も例示し、最優秀賞に輝いた。

 「みなかみには、手つかずの森がまだたくさんある」と北山さん。「自伐の効果を実感できるのは数十年先。今、本気で取り組む環境整備が大切なんです」(加藤真太郎)

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