EVだけでない脱炭素「いずれ他社も理解」 トヨタのAI部門トップ

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構成・奈良部健
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 トヨタ自動車人工知能(AI)研究を率いるギル・プラット氏が、電気自動車(EV)だけではない脱炭素への道筋について、報道各社の合同取材に語った。

 ――1月の世界経済フォーラムの年次総会(通称「ダボス会議」)で、脱炭素について提言しました。

 「地球上にある緑地はすでに最大限のCO2を吸収している。吸収しきれない分はそのまま地球上に存在し、子供や孫の時代のみならず、その先ずっと残ってしまう。できるだけ多く、しかもなるべく速やかに削減していかなければならない」

 ――他にどんな議論を。

 「資源不足の問題だ。電気自動車(EV)をつくるには、ガソリン車に比べて最大6倍もの重要鉱物が必要になる。電池に使われるリチウムは、世界のすべての車をEVにするだけの量はない。鉱山採掘の企業経営者から聞いて驚いたが、鉱山の稼働には10~16年もかかる」

 「充電インフラの整備も地域によって異なる。スイスノルウェーのように、発電の過程でCO2排出量が少なく、充電設備も十分にあるところはEVが最も高い効果がある。充電設備がそれほど整っていない地域ではプラグインハイブリッド車(PHV)がいいし、発電過程でたくさんのCO2を出し、送電網や充電設備も十分ではない地域はハイブリッド車(HV)がいい。地域に応じた多様な解決策が求められている。重要なのは、ムダを最小限に抑え、最も効果のあるところに資源を使うことだ。限られたリチウムは、(リチウムが大量に必要な)EVよりもHVに使う方が、全体の削減量は多くなる」

 ――HVが最適解だというのは、いつ気づいたのでしょうか。

 「テスラのEVを買った時だ。航続距離が300マイル(約480キロ)あるのに、私の妻が乗るのはせいぜい1日に30マイル以下。積まれている電池の90%はムダだということになる」

 ――ダボスでは理解されましたか。

 「セッションが終わってから調査をしたが、トヨタが正しい選択をしているか、それともEVへの転換が遅れているのかという質問に対し、答えは半々だった。説明を続けていけば、だんだん我々の考えを支持してくれるようになっていくのではないか」

 ――トヨタはHVもEVも水素もと、全方位で取り組んでいますが、他の自動車メーカーはEVシフトを加速しています。

 「人間は一つの選択肢を選べば、それがすべてに当てはまって問題が解決すると思いたくなるし、完璧だと思う解にほれ込んでしまうものだ。しかし、時には完璧は良いことの敵にもなる。私が尊敬しているアインシュタインの言う通りで、説明はできるだけ単純化すべきだが、実態はもっと複雑ということだ」

 ――ライバルもトヨタと同じ考えになると思いますか。

 「それは可能なだけでなく…

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