ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、国際刑事裁判所(ICC)が17日、占領地から違法に子どもを連れ去った戦争犯罪に関与した容疑で、ロシアのプーチン大統領に逮捕状を出した。戦争犯罪の根絶をめざし、集団虐殺などを裁くICCとは、どのような組織なのか?
ICCは2002年、常設の国際刑事司法機関として、オランダのハーグに設立された。1998年にローマで採択された設立条約(ローマ条約)には、現在、日本を含む120カ国以上が加盟する。
ICCが裁くのは、国家間紛争や国内紛争などで重大な非人道的行為を犯した個人だ。具体的には、①特定の民族や宗教集団などの壊滅をねらった集団殺害(ジェノサイド)、②一般住民の虐殺や性的暴行などの「人道に対する罪」、③捕虜の取り扱いなどを定めた戦争法規違反(戦争犯罪)などだ。
非人道的な指導者が裁かれる可能性を示し、紛争抑止につながることを大きな目的とする。公平な裁きで、紛争当事者の和解や再建を促すねらいもある。
国際司法裁判所とは異なる役割
同じくハーグを拠点とする国際司法裁判所(ICJ)は、国家間の法律問題を取り扱う点で、個人を裁くICCと役割が異なる。
ICCの独立性は、締約国と国連安保理のチェックとバランスのうえに成り立っている。戦争犯罪を裁く義務を負う国家が、裁く「能力」や「意思」を持たない場合のみ、ICCは「補完的」に裁判を行う。
ICCが行使できる「管轄権」は、2002年7月1日以降に起こった事件に限られ、時効はない。原則、被告が締約国の国籍を持つか、締約国内で起こった犯罪でなければならない。ただし、国連安保理が付託した事案はすべての国連加盟国で管轄権を持つ。
ICC法廷は一審、控訴審の二審制。裁判官は18人で締約国が9年に限定された任期で選出する。
裁判官の一人、赤根智子氏は…

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