「ダイショーを本当の甲子園に」大分商・渡辺公人、泣いた兄の分まで

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山口裕起
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(19日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 大分商―栃木・作新学院)

 練習を終えて部室でスマートフォンを開くと、ラインのメッセージが届いていた。

 「おめでと」「がんばれよー」

 3年ぶりに選抜大会の出場を決めた1月27日、大分商の中堅手・渡辺公人(きみひと)は、その画面を見て思わずにやけた。末尾に「!」が五つもついていたからだ。

 送り主は三つ上の兄・温人(はるひと)さん(20)だった。

 「ありがとー!」「おう!」とだけ返した。

 短い文のやりとりだが、これで十分だ。「お互いの思いは伝わっているはずなんで」。渡辺はそう言ってうなずいた。

 昨秋の大分県大会、九州大会は2番打者として全8試合に出場し、21打数12安打と打ちまくった。

 持ち味は50メートルを5秒9で走るという足。いずれもチームトップの打率5割7分1厘、3盗塁をマークし、九州大会4強に貢献した。那賀誠監督(55)も「守りでも守備範囲が広く、攻守でチームに勢いをつけてくれた」と目を細める活躍ぶりだった。

 「なんとしても選抜に出たかったので、持っている力をすべて出し切ろうと思いました」。渡辺には、選抜への強い思いがある。

 3年前、中学2年の終わりだった。

 大分商は秋の九州大会で準優勝したことが評価され、2020年の第92回大会に選ばれた。古豪復活へ、23年ぶりの春の甲子園に沸くチームを、「1番・中堅手」として引っ張っていたのが温人さんだった。

 兄の背中を追うように小学2年で野球を始めた渡辺にとって、強豪校で活躍する温人さんは自慢の兄。甲子園でプレーする姿が見られるのを心待ちにしていた。

 「小学生のころから一緒にキャッチボールや素振りをして、投げ方やスイングを教わった。僕は凡退したらすぐ落ち込むので、『笑顔でプレーしろ。笑っていればいいことあるぞ』とよく言われました」

 そんな温人さんから笑顔が消える。

 選抜開幕が8日後に迫った3…

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