ともに中東の地域大国で敵対してきたサウジアラビアとイランが、中国の仲介で外交関係の正常化に合意しました。米国が安全保障の軸足を中東からアジア・太平洋に移し、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が続くなか、中東諸国は米欧と一線を画した独自の外交を続けているように見えます。中東政治に詳しいヘブライ大学のエリ・ポデ教授は、その特徴を「どっちつかず」ならぬ「どちらも」外交と言います。
――サウジとイランが外交関係の正常化に合意しました。驚きましたか。
合意に至ったこと自体に驚きはありません。時に公式に、時に水面下で、関係改善へ向けた交渉が続いていたことは知られていました。問題は、合意のタイミングがいつになるかということだけだったからです。
同じ湾岸諸国で、イランとの外交関係の格下げをしていたUAE(アラブ首長国連邦)は昨年、イランとの外交関係を回復しました。UAEは2020年には、イランと敵対するイスラエルとの国交を正常化しました。
サウジは今回、イスラエルとの関係改善を進めていると報じられる中でイランと合意しました。敵対する両側に接近する「ダブルポリシー」ですが、それほど珍しいことではありません。
――中国の仲介についても予想していましたか。
確かに、そこは驚きました。ただ、中国が世界各地で影響力を強めようと動いていることは、すでによく知られています。中国と、サウジやUAEなど産油国との関係の深まりは、近年顕著になっている傾向です。中国はエネルギーの調達先としての中東を重視しています。そう考えると、やはり今回の仲介についても「実現すべくして実現した」とも言えます。
今、ロシアはウクライナ侵攻にかかりきりで、中東でこれまで自らが影響力を行使してきたイランやシリアと従来の関係を維持するので精いっぱいでしょう。そこに中国が関与を強めてきた構図です。間違いなく、米国にとっては面白くないでしょう。
――今回の合意は、中東の国際政治にどれほどのインパクトを与えますか。
具体的には、イエメン内戦(…

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