年金改革反対で燃えるフランス マクロン氏は強硬手段 背景には何が
フランスで100万人を超える人たちが怒っています。「フランスを停止させる」と抗議し、相次ぐストライキで鉄道の運行やごみ収集など市民生活に影響が出ています。怒りの原因は「年金制度の改革」。なぜ市民はこれほどまでに怒るのか、改革の中身はどんなものなのか、第一生命経済研究所のエコノミスト田中理さん(48)に聞きました。
――マクロン政権は16日、国民議会(下院)の採決を経る方法ではなく、憲法の特例規定を使って年金改革に関する法案を成立させることにしました。
フランスの議会は二院制で上院と国民議会があり、基本的には国民議会の決定が重要です。国民議会で賛成が得られなくても法案を成立させられる特別な方法が、憲法49条3項(49・3)です。ただし、いくつか制約があります。予算関連でない法案には1会期に1回しか使えません。
今回の年金改革法案は49・3を使うことも見越して、予算関連の法案の体裁をとっています。ちなみに議会で採決し、否決された後に同じ法案に49・3を使うことはできません。
ギリギリまで説得交渉をしたようですが、このまま採決すると否決される恐れがあると判断したのでしょう。マクロン大統領が内政で最も重視する法案が否決されたらレームダック状態になります。
――議会の対抗手段は?
49・3を適用することが決まってから24時間以内に内閣不信任案を出す方法があります。実際の採決は24時間以内でなくてもいい。不信任案が可決された場合、内閣総辞職となり、年金改革法案も議会で否決されたと見なされて廃案になります。
――国民の反対は強いようですが、廃案の可能性は高いのでしょうか?
そうとも言えません。極右や極左の党は不信任案を出して賛成するでしょう。ただ、中道右派で野党の共和党は内閣不信任案への投票を棄権するとしています。内閣に全面的に同意はできないが、極左や極右に同調することはないと。
マクロン氏率いる与党連合は議会の過半数を割っていますが、共和党は約60議席あるので、投票を棄権すれば不信任案は否決されます。しかし、もし共和党から15人ほどの造反者が出た場合は不信任案は通ります。
あり得ない頻度で強硬手段使う
――なぜマクロン政権は追い込まれているのですか?
昨年4月の大統領選の直後に…
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ファッション担当記者として、2015年から継続的にパリ・ファッションウィークの取材を現地でしてきました。朝から晩まで様々な会場で様々なブランドがショーを開催し、我々ジャーナリストやバイヤーたちはパリ市内を移動して回ります。 移動手段は